東カズ



最近男鹿の回りをちょろちょろと小さい犬が纏わり付いている、と言うのが最初の印象だった。ついでに男鹿が羨ましとも思った。

「、東条先輩だ…」
「あ?」

バイト先で作業をしていれば聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、物珍しげにシートの隙間から顔を出して覗いている見覚えのある小さい犬と目が合った。途端に犬は物珍しげな顔を崩し、にへらと害の無い様に笑う。

「…あー、男鹿の…」
「あ、初めまして、カズって呼んでください」
「…ん?あー、ああ、俺も東条で良い」
「東条さん」

さんは要らないと言おうとしたが一応のケジメなのだろう。何も言わずに上司に休憩に入ると言い外に出た。がさりとシートの音にぴくりと肩を揺らしたカズにムッと唸ってしまった。
やはり怖いのだろうか

「…あ、や、えーと、その、横に来られると、体格差が…際立つと言うか…」
「…嗚呼」

つっかえながら言われた言葉に暫く考え、なるほどなと声に出す。確かに細いし、俺よりかなり小さい。高校男子としてはコンプレックスなのだろう。男鹿の隣にいる古市と言う奴ぐらいの…と考えて、止める。途中で面倒になったのと流石に失礼だなと思えたからだ。俺はよく顔に考えている事が書いてあると言われるし。

「ま、ジュースくらいなら奢ってやるから休憩付き合え」
「…!はいっ!」

何だか急にキラキラと輝いた瞳で見てくる為、一瞬犬の耳と引きちぎれんばかりに振られる尻尾が見えてしまった。なんだこれ可愛い。いつもは小動物に寄られもしないのだがと何だか思考まで違う方向に向いてしまう程だ。

「東条さん?」
「いや、何でもない」

何でもあるが、とりあえず言ってみればそうっすか!と輝く笑顔と共に元気に返され、胸の奥がきゅうっと鳴った。

「カズって…」
「はい?」
「犬みたいだな」

小型のと付け足せば、困った様に眉を下げて笑いながらよく言われますと返すカズにやっぱり犬みたいだと思った。
暫くしたら頭を撫でて良いか聞いてみよう。






所謂ペットショップで一目惚れするような感覚です






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カズくん掴めね
東条さんわかんね
無謀な海に飛び込んでみた
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