おがふる



女の子が好きだ。ふわふわの髪やさらさらの髪、好かれる為に申し訳程度、綺麗に見せる為にごてごて、顔に化粧をして、綺麗な可愛い服を着て、最後に「可愛い?」と問い掛けてくる。その問いに「うん、可愛い」と言うのが男の仕事だ。女の子が悩んで着てきた服に「この色は止めといたら」なんて答えは野暮と言う物。それは女の子と一緒に服屋に入って言ってやる物。買い物に付き合う男は好かれる。結局女の子と付き合うには根気と我慢が必要だ。あと、たまに自分の意見を言う。それは友達にも言える。無理をしないで付き合うなんて、性格が似てる奴で無いと無理だろう。あとは無理が無い、小さい頃から一緒にいる奴。
ああ、もう一つ、よっぽどの事じゃなければ気にしない馬鹿ですぐ忘れる奴。

「それは俺と言いたいのか古市」
「他にいるなら是非教えて欲しいよ」

隣でガチガチとコントローラーを指で叩いている男鹿はテレビに目を向けたままいつもと変わらない声を掛けてきた。
ほら、あんま気にしないだろお前。

「言っておくが俺は胸が深いだけだ」
「懐だろ馬鹿」

男鹿が目を向けているテレビ画面には勇者がドラゴンと戦っていた。他にも騎士や魔法使いがいる。思うんだが騎士いたら勇者要らなくないか?だってお伽話では騎士か王子様が姫様を助けるだろ、なんでわざわざ勇者なんだ。

「…古市お前、くだらない事考えてるだろ」
「うん」

ボーッと勇者の必要性について考えていればその間にテレビ画面はピタリと止まっており、男鹿がこっちを見ていた。

「お前は急に恋愛論を話し出したと思ったらまた急に黙るし」
「うーん、急に恋愛論より勇者の必要性が気になって」
「は?要るだろ勇者」
「えー、騎士だけで良くないか?」

我ながらなんてくだらない話をしているのだろうか。止まったままの勇者様ご一行が恨めしげに睨んで急かしてくるんじゃないだろうか。

「なんで要るの」
「だから、騎士が姫様を助けられても、世界は救えないだろ」
「…嗚呼」

つい感嘆の声を出してしまった。悔しいが確かに騎士は世界を救えない。あくまで姫様を助けて守るだけだ。癪だが男鹿の言い分には納得してしまう。

「じゃあお前は勇者な訳だ」
「なんで」
「だって魔王の育て親で、世界の運命はお前の育て方にあるだろ」

男鹿はよく分からないといった顔で俺を見る。なんだ、ただの馬鹿だ。と安心してつかの間、とんだ爆弾を落とされた。

「姫だって守ってるぞ」
「は、」
「何度も守ってるだろ、古市」

待て、俺は姫じゃないだろう。そんな格好良い笑顔で、言われる事じゃない。
悔しい、悔し過ぎるが、駄目だ、馬鹿に負けた。
再開された勇者ご一行が呆れた視線を向けている気がした。






君は勇者兼騎士様






___
最初の恋愛論は、あまり意味ない。うん
あと古市が悩んでいた事は僕が授業中ずっと悩んでいた事です
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -