serene time


※現パロ、同棲。2020/8/16(日)お盆休み最終日の夜に書きました。



「ねえぜんいつー、あしたから仕事はじまっちゃうよ」


たまってしまっていた洗い物をする俺の腰に巻きついて、同棲している愛しい彼女は唇を尖らせた。俺にくっついてくるのがかわいくて、「んー?」と口角を上げながら耳を傾けると、募っているのは、いやだとか行きたくないとか不満の音と、ちょっとだけさみしいって音。長いお盆休みでここ1週間くらいは毎日のように一緒にいられたから、きっとこの"さみしい"は俺と顔を合わす時間が減ることへのさみしい、だ。

「そうだねえ」と同意しながら、はやく振り返って抱きしめてあげたくて、シンクの中にたまった皿をどんどんと拾い上げて洗剤で泡立てていく。


「仕事、行きたくないなあ…」
「ふふ。俺もずーっと一緒にいたい」
「…ねえ、善逸」
「ん、なあに?」


腰に巻きついた腕に少しだけ力がこもる。泡に包まれたお皿を洗い流して、蛇口をしめて皿洗いは終わり。彼女の服が濡れてしまわないように、しっかりタオルで両手を拭いてから、くるっと体を反転させる。俺のおっきめのTシャツを着てこちらを見上げる彼女の姿が、あまりにもかわいい。

すぐにでもいろいろとしてやりたかったけど、さっき呼びかけられたから、とりあえず腰に腕をまわして彼女の言葉を待った。


「あのね、善逸になでなでしてもらわないと、仕事いけないかも」


あー、なに、そういうこと言っちゃうの? かわいすぎて思わず息を呑んだ。こちらの本音としては、なでなでどころかなんだってするよって感じなんですけど、なでなでっていうところがまたいじらしい。無意識だろうけど上目遣いになったその瞳をじっと見つめながら、柔らかな髪にそっと触れた。


「なまえがあしたからも仕事がんばれるように、これはおまじないね」
「…うん」
「だいじょうぶ、あしたも仕事がんばって帰ってきたら、いっぱい甘やかしてあげるからね」
「…へへ。うん」


そうやって数回髪を撫ぜてから、愛おしくてたまらなくてぎゅっと抱きしめた。俺だって長い休みのあとの仕事はいやだけど、こうして甘えてくれて癒してくれる存在がいることでがんばれてるのを、なまえは知ってんのかなあ。


「今日はあしたに備えて、早めに寝よっか」
「…うん。腕枕してくれる?」
「もー、毎日してるでしょー」


抱きあったままそんな会話をして、休みが終わることが名残惜しいのか、いつもより甘えたな彼女の脇腹を軽くくすぐった。漏れ出た高めの笑い声を食むようにしてひとつ口づけてから、軽い体を横抱きにしてベッドまで連れていく。普段なら自分で歩けるよって意地を張るところで、素直に首に腕をまわしてくるのも、きっとさみしいからだ。



だいじょうぶ、さっきも言ったけど、俺がいくらでも、何度でも甘やかしてあげるから。だからそのかわりずっと俺のそばにいて、ずっと俺だけにそのかわいい姿を見せてね。


ベッドのうえ、俺の腕枕ですぐにねむりに落ちてしまった彼女のまぶたに、そっとキスを落とした。



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