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僕と彼女とてるてる坊主


「どうしたの?」


窓際に立って外を見つめていると、ソファに座って雑誌をパラパラと捲っていた年上の彼女が問いかけてきた。
僕は外に視線を向けたままそれに答える。


「よく降るなと思ってね」


窓の外では闇夜を切り裂くように強めの雨が降っていた。
風はないから窓を叩くこともなく、それはただただ真っ直ぐ地面に向かって落ちていく。


「そういえばもう3日連続だっけ。明日も雨みたいよ?」

「…そう」


残念に思う気持ちが自然と声のトーンを低くさせた。
それに気が付いたのだろう。
昴琉は小さく苦笑を漏らした。


「雲雀くんは雨嫌い?」

「別に。ただ…」

「ただ?」

「―――いや、何でもない」


促す彼女に僕はゆっくり首を振ってみせた。
口にしたところで解決出来ることじゃない。
外出が億劫になるし傘を持つのも煩わしいけど、僕は雨は嫌いじゃない。
家にいればそれこそ天気なんて関係ないし。
どちらかと言えば、僕よりも彼女の方が嫌いなんじゃないかと思う。
この間も雨が降り続いて憂鬱になっていたくらいだし。
洗濯物が乾かないって嘆いてもいたしね。


だからかな…僕が晴れて欲しいと思うのは。


明日は貴女の仕事が休みで。
出来るなら週に2回の限られた休みを、いつも頑張っている彼女に楽しく過ごさせてやりたい。
僕は昴琉と過ごせれば、それでいいんだけどね…。

ぼんやりと考えを巡らせていると、昴琉も隣にやって来て「雲雀くん」と綺麗な声で僕を呼んだ。
彼女の方を向くと昴琉は自分の顔の横で白い物体をひらひらと揺らした。


「はい、てるてる坊主。ティッシュで作った即席だけど。
 明日晴れて欲しいんでしょ?」


にっこり微笑まれて、僕は数瞬固まってしまった。
貴女の方が晴れて欲しいと望んでいるはずなのに、どうして僕の為?
自分の為に作ろうと思わなかったの?
「ん?」と首を傾げて僕を見上げる貴女を、僕は小さく笑ってから抱き締めた。
そうだ。こういうヒトだった。
自分よりも僕を優先して考えてくれる昴琉の優しさが嬉しい。


僕は貴女のそういうところ、大好きだよ。


頬に軽く唇を寄せると、昴琉は恥ずかしそうに頬を朱に染めた。


「雲雀くん、こういうの信じないんだっけ」

「いや…吊るしてみようか。貴女が作ったのなら効果がありそうな気がする」


僕の言葉に彼女は益々頬を紅潮させる。


「顔は描かないのかい?」

「確か顔描くと雨になっちゃうって、子供の頃に聞いた気がする」

「へぇ、知らなかったな」


貴女の気持ちが詰まったのっぺらぼうのてるてる坊主を受け取って。
それでもやっぱり貴女の為に明日が晴れればいいと願いながら、僕はそれをカーテンレールに吊るした。



2010.6.1


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