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それは一瞬の出来事で、オレには止める術もなく。


いつものように学校に忍び込んだランボを追いかけて屋上に駆け込むと、丁度追い詰められたランボが『10年バズーカ』を取り出して転んだところだった。
その拍子にバズーカからロケット弾が発射される。
あぁ！何やってんだよランボ！
転んだランボに駆け寄りながら、オレは煙の尾を引いて向かうその先を目で追って…ギョッとした。

ひ、ヒバリさん？！

そこには気持ち良さそうに昼寝をしているヒバリさんの姿。

うわあああぁぁぁっか、咬み殺されるぅーーーっ！！！

ただでさえ彼の愛する並中に部外者のランボが入り込んでいるんだ。
その上こんなコトに巻き込んだら…！


『僕に攻撃を仕掛けるなんていい度胸だね。咬み殺してあげるよ』


ヒバリさんが不敵な笑みを浮かべ、トンファーを構えてこっちに迫って来る姿が容易に想像出来る。
こ、怖ぇぇぇ！
あ。でも、木の葉が落ちた音で目が覚めるくらいだし、ヒバリさんなら避けるかも…！
そう思ったのに。
ヒバリさんは全く起きる気配を見せず……ロケット弾は見事にヒバリさんに命中してしまった。


「ひいぃぃぃ！ヒバリさんに当たっちゃったぁ！」


オレは頭を抱えて思わず叫んでしまった。
濛々と屋上に煙が立ち込める。
あ、当たったってことは10年後のヒバリさんが現れるんだよな…。
あのヒバリさんの10年後か…興味は物凄いあるけど…


『また群れてるの？咬み殺すよ』


って普通に言われてやっぱり咬み殺されそうだよ…！
ハラハラしながら煙が掻き消えるのをランボと２人で見つめる。

けれど煙が消えたその場所には、誰もいなかった。

あ、あれ？消えちゃった…。
10年後のヒバリさんと入れ代わるんじゃないの？
指を咥えてブルブル震えるランボに詰め寄る。


「ど、どういうことだよ！ランボ！」

「ぐぴゃ！ら、ランボさん知らないよ！しーらないっ知らないもんねー！」

「あぁ！オイ！コラ！どーすんだよ、ランボ！」


都合が悪くなったランボは、『10年バズーカ』を急いでもじゃもじゃ頭の中に仕舞うと一目散に逃げてしまった。
そこへ入れ代わりにオレを追って、獄寺君と山本がやって来た。


「10代目！アホ牛またなんかしたんすか？」

「そ、それが…」


オレはさっきの出来事を２人に説明した。
あからさまに２人の顔は引き攣ったが、一先ず待ってみようということになった。
入れ代わる時間は５分間だけだし、時間が過ぎればヒバリさんも戻ってくるだろうと踏んでいたんだけど…。
屋上に３人で座って暫く待ってみるが、一向に現れそうな気配はない。
山本が頬をぽりぽり掻きながらぽつりと言う。


「…もう５分経ったよな」

「そうだよね…何でヒバリさん戻ってこないんだろう」

「うーん…『10年バズーカ』の故障じゃないスかね」

「こ、故障？！そ、そんな…！それじゃヒバリさんどうなっちゃうの？」

「スミマセン10代目…それはオレにも分かんないッス…」


申し訳なさそうに獄寺君が項垂れた。
あぁぁぁ！ランボのヤツ！なんて面倒なことしてくれたんだ！！


「どうしよう、どうしよう、どうしよう！」

「うるせーぞ、ツナ」

「イッテー！」


どこからともなく現れた自称ヒットマン兼家庭教師のリボーンが、オレの後頭部に飛び蹴りをかました。
屋上のコンクリートに強かに顔面を打ち付けたオレは、両手で顔を押えながら振り返って文句を言う。


「何すんだよ！リボーン！」

「仮にもマフィアのボスがギャーギャー騒ぐんじゃねぇ。みっともねーぞ」

「だ、だけど…！」

「ヒバリが戻って来ねーんだろ。獄寺の言っていたように故障した線が濃厚だな」


み、見てたのかよ…！
リボーン変装が趣味だから何処かに隠れてたのか？…何故かオレ以外気が付かないんだよな。
というか学校内にヒバリさんに内緒で秘密基地作ってるし、どこから見てても不思議はないんだけどさ。
プライベートも何もあったもんじゃない…って今はそんなコト言ってる場合じゃないんだった！


「どうしよう！リボーン！」

「だから一々騒ぐな、バカツナ。騒いだってヒバリは帰って来ねーんだ。
　一先ずおまえ達はランボを捕まえとけ。原因を調べるのに『10年バズーカ』が必要だからな」

「わ、分かったよ」

「オレはちょっと根回してくる」


ニッと笑ってそう言うと、リボーンはハンググライダーに変身したレオンに乗って屋上から飛びたった。
フェンスにしがみ付いてオレはその姿を見送る。

頼むよ、リボーン…。
ヒバリさん…どうか無事でいて下さい…。

無力なオレはリボーンが飛び去る姿をただ見つめ、フェンスを握り締めることしか出来なかった。

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