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戦場では、出陣と退却を繰り返す面々を見つめながら、険しい顔で地図とにらめっこする女性が一人。戦場では珍しく、露出の高い服を着ている。
「状況が変わって来たわね……嫌な予感がするわ。」
「リ、リオ様!!」
リオと呼ばれた女は、慌てた様子の兵士に向き直る。
「どうしたの?」
「そ、それが……急激に負傷者が」
そこでハッとした顔をしたリオは、急いで周囲の兵士に指示を送る。
「皆、退いて!作戦を立て直すわよ。……それで、負傷者は」
念のため、怪我の原因を探る。彼女の胸に迫る不安の塊は、やがて現実のものとなる。
「はっ、数名凍傷であります。」
「……少し出るわ。ここをお願いね。」
リオは上着を掛け直すと、ずんずんと前へ進んでいった。策士が前線に出ることなど異例である。兵士が慌ててリオを引き留めようとする。
「あ、あのどちらに」
「お呼ばれよ、鮮烈な方からの……ね。」
それだけ呟くと、リオはあんぐりと口を開ける兵士達を残し、颯爽と戦場の真っただ中へ掛けていった。
その一方、レジスタンスでは、この混乱に乗じて新たな策を練っていた。うまくいけば、新たな戦力も引き込めるかもしれない。リーダーの見送りの視線を受け、今回の作戦に駆り出されたメンバーは一斉に走り出した。
その中には、少女と青年の姿が。
「といってもさー。繞さん、どうしたらいいの?とりあえず恩売って後で勧誘攻撃?怪しい宗教みたい?」
「それはどうかと……戦意喪失、またはこれ以上の戦争が無駄だと感じていそうな人を何とか見つければいいのではないか?」
「そっかー頭いいね」と白髪の少女は能天気に答える。これが散歩であればまだ理解できる状況ではあるが、いかんせん戦争の地に出るにしては緊張感に欠ける。繞はとても心配であった。
「それよりアニエラ、あまり気を抜かないようにするんだよ。」
「だいじょーぶだいじょーぶ。あ、あそこ。」
アニエラが指をさした先では、全身黒い装束に包まれた男と、白い豊かな髪を持つ女が向かい合っていた。どうやら一対一での戦闘の様だ。周囲には兵士が一人もいない。
「んー、あの人何処かで」
身を乗り出すアニエラを、繞は慌てて抑える。
「しっ!気がつかれたら面倒だよ。」
「えーでも、あの男の人」
と言いかけたところで男が動いた。男の周囲は冷たく青白い光を放っている。アニエラはそこで「あ」と言い、二人の元に駈け出した。とっさの事態に止めることのできなかった繞は、額を片手で抑え、少女を追うように続けて駈け出した。
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