2
フォレンの家の外に出ると、草ひとつ生えていない黒い大地が広がっていた。周囲の木々も枯れている。
紫色に染まる空と、動くことなくたたずむ月。その景色がより一層「魔界」という雰囲気を表現していた。
フォレンの家は魔界のにぎやかな通りのはずれにあったようだ。
しばらくは何もない、点在する家々の前を歩いて行った。しばらく歩くと、にぎやかな街並みに入って行った。そこには露店がずらりと並んでいた。地上界では見たことの無いような物が多く揃えられている。
「あ、お土産買いたい!」
「後でね、あんまり時間がないんだ。」
気になるお店もあったが、今回は議会が優先事項だ。仕方なくルネはフォレンの後ろを早足気味でついていった。
露店の先にそびえる、城のような大きな屋敷の前に立つ。
「フォレン様、お待ちしておりました。ルネ様もご一緒で。」
「こ、こんにちは……」
出迎えたのは、スーツに蝶ネクタイの男。ぴしっとオールバックで決めた髪型が清々しい。恭しく頭を下げ、扉を開けてくれた。
「皆もう来てる?」
「いいえ、フォレン様方で35人目で御座います。全員で116名いらっしゃる予定でございますので……」
「あ、ありがとう、そこまで言わなくて大丈夫だから!相変わらず凄いなぁアイロメは。」
呆然とするルネと、少々引き笑いをするフォレンに対し、アイロメは変わらない表情で再びゆっくりと頭を下げた。
「お褒めの言葉、有り難く頂戴いたします。さ、中へどうぞ。」
そのまま中に入る。建物の外見は背景も相まって恐ろしい館のような雰囲気であったが、中は派手な装飾も無く、玄関ホールの横の壁は本棚になっており、ぎっしりと本で埋め尽くされていた。その周りでは魔族たちが本を取り出したり、積み上げられてしまった本の元の場所を探していたりと忙しなく動いていた。
「……凄いね。」
その雰囲気に圧倒されるルネであるが、フォレンは気にも留めずにどんどんと奥に進んでいった。
[ 20/22 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]