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今日は魔界で会議があるらしい。正装に着替えたフォレンが支度をしながら、寝ぼけ眼なルネに声を掛けた。
「ルネも行く?」
「へっ?」
普段魔界に行くときは常にお留守番であったが、珍しく誘われて一瞬耳を疑う。
フォレンは間抜けな顔をしたルネを見て、変わらずにこにこ笑っている。
「で、でも……」
「行こうよ、ほら。ルネもおいでってシャルロッタ達にも言われているからさ。」
「めったに魔界になんて行けないんだから」と、ぐいぐいクローゼットまで押される。「じゃ、待ってるよ」とフォレンは先に外へ出ていき、一人色々な意味で置いて行かれたルネはしぶしぶ小奇麗な服に着替えてから、部屋の外で待っていたフォレンに声を掛けた。
長い廊下をフォレンの後ろから心配そうに付いて歩く。中庭で鍛錬していたアマリアとヴェーラは、笑顔で「私達は城を警備しているから安心して行ってらっしゃい」と答えた。アマリアの顔を見て少しほっとしたルネは、距離が開いてしまったフォレンの後ろを慌てて追いかけた。
場所は変わって地下室。
普段は厳重に閉められている扉に解除魔法をかけ、ゆっくりと開ける。部屋の中は、真ん中に物々しく存在する二つの魔法陣以外は何もなかった。
左には紫色に光る魔方陣、右には白く輝く魔方陣。
「左は魔界、右は天界ね。魔界はいつでも行き来できるけど、天界はロックが掛かってるから、余程の事が無い限り入れないんだ。」
フォレンはそれぞれ指を指しながら解説した。天界に関してはアマリアやヴェーラの方が詳しいと思うよと、フォレンは苦笑いしながら続けた。
よっと、と左の魔法陣にフォレンが入り、躊躇するルネを手招きする。恐る恐る魔方陣の中に入るルネと手を繋ぎ、フォレンは呪文を唱えた。
「わぁぁあ!」
周囲に強い風が巻き起こり、まばゆい光が当たりを包む。
光のシャワーだと思いながら、ルネはあまりの眩しさと風の強さに目を瞑った。
「……あ、あれ?」
光と風が止み、目を開くと先ほどとは違う様子の部屋。魔王邸とはうって変わってシンプルな木製の家具が目立つ。
「着いたよ。」
「ここが魔界……」
「と言っても、魔界の中の僕の家だけどね。」
興味津々に見回すルネの肩をぽん、と叩き、フォレンは「行こうか」と促した。
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