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結局、ミルカローズはそのままの勢いでルネ達を質問責めにし、すっかりヘトヘトになったところにルネの父であるロベルトの迎えが来た。
押しの強いミルカローズと対照的に、父のロベルトは水色の髪の毛を短く切り、顔もサッパリとして爽やかな印象だ。瞳はやはり、勇者一族の証である青の瞳。

「妻がお世話になりました。」

ミルカローズの肩を優しく叩き、もう帰ろうと促しながら柔らかくお辞儀をする。

「本当だよお父さん、お母さん鎖に繋いどいてよもう……。」

「お、お母さんそんなプレイはちょっと……」

「ちっがーう!!」

変な意味と受け取ったミルカローズが頬を朱に染めるが、ルネがすかさず否定した。

そんなやり取りにフォレンとアマリアは笑みを漏らす。それに気がついたルネは恥ずかしそうに笑った。

しかし、フォレンには引っかかるものがあった。ミルカローズがルネを宜しくという手紙を送ったのだが、ルネと住んでもう数カ月。特に異変も進展も無い。それは二人の関係という意味ではなく、周囲、世界的な意味合いでだが。
ということは、ルネはそろそろ実家に帰すべきではないかと。

しかし、ミルカローズはさも当然のように告げた。

「ルネ、フォレンさんに迷惑かけるんじゃないのよ?」

「あ、あれ?あの……ルネも一緒に帰らなくていいんですか?」

「いいのよ、すっかりフォレンさんに懐いてるみたいだし……それに、この子は鍵だから。」

「鍵?」

聞き返すと、ミルカローズはくすっと笑ってそれ以上話を深めなかった。

ロベルトのディオシビスが二人を乗せ、上空に羽ばたく。

「じゃあね、ルネ。また来るからね!」

「しばらくはいいですこないでください。」

ばっさばっさと大きな羽音を立てて、二人を乗せたディオシビスは去っていった。


「はぁ……えらい災難だった…フォレンさん?」

「ん?…ううん。帰ろうか、ルネ、アマリアちゃん。」

フォレンは、ミルカローズが最後に残した「鍵」という言葉に、少し引っかかりを感じた。

「ルネはご家族と仲がいいのですね。」

「んー、まあね。」

アマリアはルネの家族に興味を持っているようだ。ルネも気になって聞き返す。

「アマリアって家族は?」

「天使は家族って概念が無いですね。生まれた時から人間界でいう『学校』のような施設で教育されますので。」

「え、そうなの!?」

談笑しながら歩く二人の後ろをついて行きながら、フォレンはミルカローズの言葉をずっと考えていたが、答えは簡単に出なそうだったので今は忘れることにした。




地上界。

人間たちが住む世界では、少しずつだが、黒い何かが侵食し始めていた。

しかし、誰もまだその存在に気が付いていない……。



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