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フォレンは、二人が完全に室内に入るまでその姿を見送っていが、

「魔王様がよそ見とは感心しないな!」

その背中目掛けて、男が剣を振り上げ攻撃を仕掛ける。しかし、当たったかと思われたその攻撃は、振り向いたフォレンの指に押さえられていた。

「……なっ!?」

「はい、残念でした。」

攻撃を止めた指をそっと前に出すと、男は後方に跳ねとばされた。態勢を立て直そうとする隙に、すかさずヴェーラが拘束の呪文を唱える。上空に光の輪が生まれ、それが男を囲むとロープとなって男を縛り上げた。

「申し訳ありませんが、私達にしばらくご協力ください。」

「な、何をするつもりだ!」

「話を聞くだけだから大丈夫大丈夫。」

「全く説得力が無いぞ!魔王め!」

きーきーと騒ぐ男を見て、ヴェーラがやれやれとため息をつく。

「全く信用されていませんよ、フォレン。」

「僕もやりたくてやってるわけじゃないんだけど……」

相変わらず喚く男を連れて、げんなりとするフォレンと妙に爽やかなヴェーラはその場から姿を消した。

その一方で、ルネとアマリアは応接室で待機していた。
アマリアは優雅に椅子に座っているが、ルネは落ち着きなく椅子の後ろでぐるぐる歩いている。ふと立ち止まり、アマリアに向いた。

「そういえば、フォレンさん達すぐ来たけど、声聞こえてたのかな?」

「いいえ、……恐らくはこれです。」

アマリアが首から下げているペンダントをそっと外す。興味深々で近づくルネにそれを手渡した。

「一見普通のペンダントだけど……あ、ロケットペンダント。」

「このロケットペンダント、開くと中にスイッチがありまして……押すとヴェーラ上官に緊急の連絡が届くのです。」

開いたロケットの裏蓋には、律儀に「緊急用!」と書かれていた。

「私はまだ研修生ですので、何かあればいつでも上官を呼べるようになっています。」

まじまじとペンダントを見つめたルネは、「どうやってヴェーラさんに伝えてるのだろう」という疑問がわいたが、うっかりスイッチを押すのを恐れてすぐアマリアに返した。

アマリアはルネから返してもらったロケットペンダントを再び自身の首にかける。

「成る程ー……フォレンさんもコレ作ってくれないかな。今日みたいな事があると困るしね。」

「確かに、貴方にも必要みたいですね。」

ようやく着席したルネと始終落ち着いているアマリアは、淹れたてのハーブティーを飲んで、ほぅっとため息をついた。


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