(遠い距離→近い距離→近い距離2の続き/瑠菜様リク)
特別じゃないなんてことない日が、
優しい色に変わるには、
君は絶対不可欠。
近い距離3
両手には重たいビニール袋。その中には今日の晩ご飯の材料がぱんぱんに入っている。
私の頭の中には晩ご飯をつくる手順。
最寄りのスーパーで買い物し帰路につく。
俗に言う「新婚ほやほやの新妻」の私は、るんるん気分で歩く。
なんならこの荷物の重量も心地良いくらい。
いつまでもこんな気持ちでいたいなぁとひとりごちた夕暮れ。
一度荷物を持ち直し、一息ついたときに声が聞こえた。
それは余りにも聞き覚えがあって、安心するような声。
「空〜」
後ろを振り返ると、いつもの笑顔。邦広の後ろには夕陽が燃えていて、私は目を細める。
「邦広ーっ」
私が駆け寄るまでもなく、すぐに近くに来てくれた。
「今帰り道?」
「うん、そう。空っぽい後ろ姿見っけて、びっくりした。買い物行ってたの?」
私が「そうそう」と笑いながら返すと、それが当たり前のように、私の手にぶら下がる買い物袋を持ってくれた。
「あ、ありがとう。」
「うん。もいっこも、」
「重いから大丈夫だよ。邦広も練習で疲れてるでしょ?」
袋を取ろうとのばす邦広の手を避けるように、私は身を捩って逃げる。
「だめ。こんなん全然重くないってー」
わははと豪快に笑う邦広。邦広の笑い方ってうつるんだよな。
無償で誰にでも柔らかい幸せをうつすところなんか、周りの人から愛される理由なんだと思う。
「えー、でもな……」
邦広、両手塞がっちゃうじゃん。
手、繋げないじゃん。
…なんて、子供すぎるかなあ。
「空ー。んー、じゃあ片っぽずつでいい?」
言いながらも嬉しそうな邦広。
うそ、伝わったみたいな返事。
これなら荷物も全部持たせなくて済むし、繋がってる感じもある。
「邦広のくせに頭良い!」
私がそう言えば、普通に照れて笑っている邦広。
「でしょ」
本当、都合の良いことしか頭に残らないんだろうな。
良い機能をお持ちでいらっしゃるわ。
1つの買い物袋は邦広が持ってくれて、残りのもう1つは一緒に持っている状態。
伸びた影を見たらなんだか可愛いなと思ったので、密かに口元を緩ませた。
「今日の夕ご飯なに?」
―穏やかな声が上から降ってきて思ったこと、
「なんでしょーか?」
―こんな素敵な日常は、きっと終わり無い。
「え?分かんね、えーと、鍋とか?」
―もしも私が私の役割に疲れたとしても、1人じゃないのなら、こうしてたまにで良い、邦広が私の日常に触れてくれたのなら、今のこの幸せや邦広の大切さを思い出すことが出来るだろう。
「え!すごい、何で分かったの?」
―色付くよ。
「まじで?すごい、めっちゃカン!」
―邦広にとって私もそうでありたい。
「すっごーい!…あ、そうだ、今日はご飯作る時邪魔しないでよ?」
「ん?キコエナイ。」
私がキッチンに立つ時に邦広が家にいる場合はよく、邪魔をしてきてなかなかご飯を作れないことがあることを思い出して、横目で彼を見て言えば、邦広も目だけで私を見て惚けて見せてきた。
その後目を細めて微笑む。
「じゃあ今日は手伝ってみよっかな」
「ああやめて、やめといて、結果的に邪魔につながるから!」
そう言うと、「ひどいなぁ」なんて思ってもいないことを呟く邦広。
「それに、指先怪我とかしたら、大変じゃん?」
「あ、オレのためか。そうかそうか。愛してるよ、空。」
不意打ち過ぎる幸せな言葉。
その単語自体、邦広から聞くことは珍しくて驚きが隠せない。
「急すぎるよ、」
笑いながら言えば、
「だって、言いたくなった。」
笑いながらそう返ってきた。
はぁ、幸せ過ぎて泣きそうだ。
オマケ
「もう、そんなにくっつかないでって!うーごーきーにーくーいいいっ」
「ははは、良いじゃん。空、手ぇ真っ赤で冷たそうだし、体だけでも暖かかったらいいなって、」
やっぱり邪魔されてます。
後ろから抱きしめられた状態で料理なんて出来ない。
野菜を洗っていると、陽気に笑う邦広は良く分からないことを言っている。
「暖かいでしょ?」
「…うん」
すると後ろの邦広は私の顎へと手をのばし、顔を無理やり後ろを向かされる。
そして、軽いキスを落とされる。
そうしたら、私、いつも緩む口を我慢できないで、「へへへ」なんてだらしない笑い声あげてしまうんだ。
エンド
アトガキ
瑠菜様、続編とのリクエストをまたまたありがとうございました。勝手に新婚生活として書いてしまいました!イメージと違っていましたら申し訳ありません。2人とも少しずつ大人になっていけばなと思いつつわりと初々しくなってしまいます。すいません。最後まで読んで頂きありがとうございました!