(なち様リク)
君の幸せは絶対だよ。
ハッピーチャージ
今日はとても大切な試合を観に来た。
私と、お腹の中の子、2人で邦広とそれから日本を応援。
膝掛けをかけて、熱い熱い試合を見る。
「邦広頑張ってるね、」
大人になって忘れつつあった人の温もりを感じ、独り言が多くなった。
私からしたら独り言なんかじゃなくて、この子と話してるんだけど、周りから見たら独り言だよね。
もうだいぶお腹も大きくなってきて、あまり興奮出来ないけど、やっぱり邦広が頑張ってる姿を見たら、「きゃー」って叫んでしまいそうになる。
かっこいいんだもん、すごくすごく。
「ねぇ?」
にやにやする口元を隠しもせずにお腹の子に話しかける。
ラブラブだねぇ、なんて、返してくれそう。
そんなことある訳無いんだけど、にっこりくらいはしてくれても良い。
セットが終わって、少し長めのタイム。今日も食らいつく日本のチームに、少し息をつく。
「はぁ〜、今日もお疲れ様だね。」
そうぼんやりと呟いて、じっと座っていることが辛くなり、立ち上がりゆっくり歩いて関係者出入り口に向かう。
そうしたら、走る音が聞こえて振り返る。
「見つけた、どこいったのかと思ったぁ」
汗だくで、束になった髪からは雫が滴り落ちた邦広はふんわりと微笑んだ。
「びっくりした!え?大丈夫なの?来ても、」
さっき、セット終わったばっかりだよね、まだやることたくさんあるんじゃないの?
「うん、ちょっとだけ!」
そう言うとすぐに邦広は、私のお腹に目線を合わす。
そして、ついさっきまでこわいくらいにボールを叩いていた手とは思えない程の優しい手つきでお腹を撫でた。
「あー、落ち着く。」
邦広がなんとなくこぼした言葉に、胸の中がほっこりする。
お腹を撫でながら「うはは」だなんてだらしなく笑う邦広を、もう何度見てきただろう。
「ワールドカップだぞー、しっかり感じろよー」
お腹の子に優しく微笑み言う彼は、どことなく自分自身に言い聞かせているようで。
私も「そうだぞー」って相槌をうった。
撫でる手を止めて、添えるだけにした邦広は私を見て、
「あんまうろうろしたらダメだろ?」
心配そうに言ってきた。
もー、過保護。
私は苦く笑って「はいはい」と返事した。
「よし、じゃあ行ってきます。」
「いってらっしゃい、怪我しないようにね?」
私の言葉を聞いているのかいないのか、邦広は屈んで、私のお腹まで顔を下げた。
「がんばってくるからな。」
そしてそう言うと、満足そうに笑った。
そうしてまた大切そうに軽く撫でる手。
親ばか。まだ生まれてもないのに。
そう思いつつ、どこか可笑しくて笑ってしまう。
「やばいやばい、まじ行かないと、」
と焦って名残惜しそうに眉をひそめる。
「急げ急げ!」
私がそう催促すると、邦広は小さく笑った。
顎をつたって落ちる汗をそのままに「じゃあ、また」と言う彼は、去り際に私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
私もゆっくりと歩いて席へと戻る。
本当に短い時間だったけど、邦広はきっと、この子を感じてまた頑張れるだろう。
そして、この子も邦広の愛を受けただろう。
これからも邦広と私、それから出会ってゆくたくさんの人の愛を受けて育っていくのだろう。
分かるよ。
君の幸せは確実。
だってほら、こんなに優しくてで強い人の血を受け継ぐ。
それと、私のこのたくさんの幸せも半分こでしょ?
エンド
アトガキ
なち様、とても素敵なリクエストをありがとうございました。果たして甘々になったのだろうか、という感じになってしまいました。イメージと違っていましたら申し訳ありません。そしていつもより短めになっちゃいました。過保護&親ばか&幸せぼけのイメージです!最後まで読んで頂きありがとうございました!