(近い距離の続き/瑠菜様リク)








今世紀最大の


約束を交わそう。






近い距離2





今日、オレはガラにもなく色々計画をたてている訳で、慣れない事に頭から白い煙が出そうだ。



だけど、煙がたって爆発したってどうしても成功させたい。





オレは今日、この練習後、空にプロポーズをする。



指輪は買った。
後は予約していた花束を取りに行って帰ればいい。

そして、何度も何度もまとめたオレの気持ちを伝えれば、それでいい。



結果は、気にしない。
だめでも諦めるつもりはない。



練習が終わり、花を取りに行き、空の待つ家に帰る道で、色んなことを考えた。これまたガラにもなく。




空の家族とは、付き合っていた頃から仲良くさせてもらっていたんだけど、ついこの間、たまたま空の父さんと2人で話す機会があった。


その時に、空の父さんが話してくれたこと。

言葉に棘も無いし、柔らかな物腰で語りかけるように話してくれた事は、オレより何年も先を生きて、オレより沢山の人を守ってきた人の分厚すぎる話で、ただ相槌も忘れて聞き入ったのを覚えている。



その時に感じたことは、空はオレのものじゃないってことだった。


今までオレは自分の為にしか生きていないことに気付いて、このまま結婚しようだなんて考えていた自分が恥ずかしくなった。



こんなどっかの関西弁のライバルみたいな真面目な考えになるなんて、思ってもみなかった。



だけど、あの時に感じたものがあるからこそ、こんな決心をしたわけだ。




流れで結婚できたらいいや、って思ってたんだけどな。

流れとか、そんな軽々しくしたらだめなんだ。


今まで、ずっと空を大切にしてきた人が居る。そこを忘れたらいけないんだ。





そんなこんなで、玄関の前。

ひとつ、大きく深呼吸。


鍵で扉を開ける。




「ただいま!」


ぱたぱたと駆ける音が聞こえるから慌てて続けて叫ぶ。



「空ストップ!そこ居て!」



足音が止まって、「なーにー?」って声が聞こえる。姿は見えないけれど、少し笑っている気がする。



オレはその場に花を一旦置いて、空の元へと行く。


不思議そうな表情の空に、再び「ただいま」って言うと、にっこり笑って「おかえりー」って帰してくれた。

見上げてくる表情はやっぱり可愛いくて、唇に触れるだけのキスをした。


嬉しそうな空の顔をもう少し見ていたいけど、今日はだめだ。




「空、こっち来て、あっち向いて?」



腕をひっぱって、適当な場所に突っ立たせると、良い向きを向かせるために肩をもってぐるりと体を回す。



「ちょっと、そのままでいてね。」



「えー?なになに?」



興味深そうに聞いてくる空を残して、玄関まで戻って花束を持ってまた戻る。




「まだですかー?」


「はい、いっすよー。こっち向いて?」




ジャージ姿だけど、空はいつもオレはジャージが一番似合うと言ってくれるからそれは良し。


花束を片手で突き出すと、空の瞳がきらきらと輝いた。



「わっ、きれーい!どしたの、こんなたくさん、」

花を見つめながら言う空。



再びオレは大きく深呼吸をした。



「空、ちょっと照れるんだけど、最後まで聞いて?」



緊張で汗ばんだ手を握って拳にしてそう言うと、空は何か真剣なことを察したのか、



「はい。」



と、目を見て微笑んでくれた。
その時に、その瞬間に、「あぁ、やっぱりオレはこの人じゃなきゃ駄目なんだ」って思った。
なぜだか分からないけど。




「出会ったときから、空はオレに、色んな事を教えてくれた。付き合って、離れなきゃいけなくなったときだって、もう二度とあんな思いさせたくないって思ったんだ。」




目を細める空。
きっと、今、彼女は心の準備を始めている。




「色んなことがこれからあると思う。けど空と一緒ならオレは大丈夫だ。空にとってもオレはそんな存在になりたい。これからも空に、ずっと隣で笑っていて欲しい。」




喋るって難しい。
うまく伝わってる気がまったくしてこないけど、伝えたいことはきちんと言えたかな。


一呼吸置いて、空の顔を見る。




「俺と、結婚してください。」



そう言って、深く頭を下げた。

返事を聞くまで、頭を上げたくない。



こんなことをしたのは初めてで、上げるタイミングが分からないのもあるけれど、なんだか上げたくない。




すると、空の細い声が聞こえた。




「私でよければ、よろしくお願いします。」




嬉しさと驚きの反動で頭を自然と上げてしまった。


涙を流しながら笑う空は美しすぎて、それにも驚いた。



なんだこれ、すっごい暖かい。


気付けば空を抱きしめていた。


「あー」とかって言う空は、笑ってるみたいだった。



「邦広らしくないー」



「たまにはいーだろ?やるときはやるんだよ、オレ。」



抱き合ったままそんなふざけ合い。


体を離して気づいたけど、空の目が涙でびちょびちょに濡れていた。



「号泣やん」



笑って言ってやれば、「幸せすぎるんだもん」なんて可愛いこと言ってくれたから、オレまで泣きそうになった。



オレはポケットに入れていた小箱を取り出して、空の左手を持ち上げた。



そして、薬指にリングをゆっくりとはめる。



「ありがとう。」



そう言いながら空がまた涙を流すから、少し笑ってしまった。



今度はゆっくり優しく抱きしめた。



「愛してる。」



耳の横でそう呟くと、「私も」って小さな声で聞こえてきた。





「一生かけて、幸せにするから。」




押し出したような声になった。
苦しいんじゃない。だけど重たくて、言葉にしたらいけないような気がしたんだ。





チームの中心だとか、キャプテンだとか、エースだとか、色んな経験をしてきて、それらはみんな同じ様な「責任」ってあったけど、今回はなんだか初めて感じる「責任」。



やっと、これだっていう本物の「責任」を感じることができたんだと思う。



それから、やっぱり一番は「幸せ」。





「幸せすぎて、どうしよう。」



胸の中で空が呟いたから、空の顎をもってこちらに向かせて顔を見る。


そして、今までしたことないくらいに大切に大切に、空に口付けた。








色んなことを乗り越えていく上で

お互いを支え合うことはきっと
簡単ではないだろうけど、

僕にしかもう君を守れない。
君にしかもう僕を守れない。

だから言えた。



今世紀最大の、幸せな約束。











エンド




アトガキ
瑠菜様、リクエストありがとうございました!結婚するとのことだったのですが、プロポーズになってしまいました、いつのまにか。申し訳ないです、本当に!こんな駄文になってしまいましたが受け取って頂けたら幸いです。最後まで読んで下さりありがとうございました!お待たせしてすいませんでした。