(なち様リク)
目と目があった、あの瞬間に
恋だ、とそう思った。
ショートする音が胸の中で弾けた気がした。
恋におちて
たまたま友達に誘われて観に来たバレーの試合。
私はバレーが好きだから、すごく楽しませてもらった。
男子バレーを観るのは初めてだったけど女子とはまた違った魅力と迫力があって、私はどんどんハマっていった。
そんな中で、一際輝く選手を見つけた。
心底からバレーが好きで楽しんでいるようにも見える表情でプレーをしていて、すごく素敵だった。
いつの間にか、どっぷりと、ファンになってしまった。
その日の試合以来、練習をたくさん見に行ったりした。
そして、とうとう、近くに行けるチャンスを手にしてしまった。
ドキドキと高鳴る心臓。
こんなの久しぶり。
サインもらうだけで十分って、そう思っていたのに、
目があったときに、彼が何故か驚いた様な表情を浮かべた。
そして、聞こえるか聞こえないかの小さな声で「やっべ」って言ったんだと思う。
どうしたんだろう、用事思い出したとか?
何も話せずに行ってしまうなんてイヤよ。だってやっとこんなに近くにいるのに。
そう、今大好きな人のこんなに近くに居るんだ。
それを改めて感じて、顔が熱くなる。
やっぱり、大きい。
かっこいい。
「あ、あの!私っ」
焦ってテンパって頭真っ白。
恥ずかしいけど、こんな風になっちゃうくらい大好きで。
「あ、いつも、来てくれてるよね?」
ふにゃりと力の抜けた笑顔で、優しくそう言ってくれた。
心臓爆発寸前。
来てるの、知っていてくれてたなんて。もう、もうどうしよう。
「はいっ!…えっと、サインくださいっ」
頑張って、色紙を手渡す。
必死になって言葉を出すけど、うまく話せられない。
それでも、「いーよ」って笑いながら言ってくれる。
「名前は?」
「空っていいます!」
「空ちゃん、ね。」
すらすらっと手早くサインしてくれる。だけど、もっとゆっくり書いてくれたっていいのに。
書き終わって、色紙の裏の隅っこに小さく何かを書いてくれている。
あんなに大きな人が細かい作業をしているのは何故だか新鮮で可愛らしいだなんて感じた。
漸く、私に手渡してくれた。
彼よりははるかに小さい私に、少しだけ屈んで内緒話するときみたいに口の横に手を当てているから、私も耳を寄せてみた。
「番号書いてるから、良かったら、連絡ちょうだい?」
夢ならまだまださめないで。
現実味の無い、このふわふわした感じは何だろう。
「はいっ」
私の声が思わず声が大きくなって、清水さんは笑っていた。
「空ちゃんが来てくれてると、オレすごい頑張れるから。また来てね。」
大きくて重たい手のひらが私の髪を乱した。
ただただ嬉しくて、その感触が大切でしかたない。
たまらない、そんな感情が私の顔に出ていたのか、清水さんは照れたような表情を浮かべていた。
「ちょい、ダメだって、そんな顔したら……」
清水さんは片手で顔の半分を覆って小さく呟いた。
なにが?顔?どんな?
私の頭に無数の疑問符。
「空ちゃん、急にでびっくりさせるかもしんないけど、まじ、連絡ちょうだいね。見ただけじゃ分かんないとこまでオレのこと好きになって欲しいから。」
そこまで言うと、バレーしている彼のあの楽しそうな笑顔と同じ表情をしたもんだから、私の呼吸は泊まりそうだった。
いや、一瞬本気で止まったかも。
「…絶対、しますっ!」
熱くなった顔。きっと私は今、今までにないくらいの赤面。
「約束ね。ごめん、もう行くから。またねー。」
重たそうな荷物を持ち上げると手をひらひらと振ってくれた。
私は、大げさなくらい全力で手を振りかえすのを必死で抑えて、控えめに振りかえした。
彼が去った後でも
この心臓は痛いくらいに
どきんどきんって跳ね上がって
やっぱり、どうしようもなく、
涙がたくさんこぼれた。
悲しいんじゃなくって
すごくすごく嬉しくて。
エンド
アトガキ
なち様、ステキなリクエストありがとうございました!なんだか甘くなってるかどうかが不安です。清水くんがチャラくなってそうで心配です。イメージと違っていましたら申し訳ないです!最後まで読んでいただきありがとうございました!