(ハッピーチャージ続編/なち様リク)
大切な存在が増えれば増えるほど、
それが僕の力に代わるから。
ハッピーチャージ2
すっごい疲れた。
すっっごい疲れた。
楽しかったけど。
フルセットの試合を終えて、しかも大会自体も佳境に差し掛かっていて、もう一度言うけど今日は一段と疲れた。
「タダイマー…」
いつもより重たく感じる扉を開けてそう言うと、空が部屋からひょっこりと顔を出した。
「おかえりっ」
空の周りを取り巻く暖かな雰囲気に宛てられて、オレの心も段々と癒されてくる。
自然と顔が綻ぶ。
花が飛んでいたって不思議じゃない。それくらいほわほわする。
「お疲れさまぁ」
病院の行き来を繰り返す今、もうかなり大きくなったお腹。
空の顔つきもだいぶ変わったなぁとしみじみと感じる。
空の後頭部を撫でながら額に口付けた後、しゃがんでお腹へと目線を合わせる。
「イイコしてたか?」
そんな事をするオレを見て空はくすくすと笑っている。
「どんどん重たくなってくるね。」
空がそう言い、早くから3人で会話をしているようだ。
「あぁヤバい。もう可愛い。」
「早いよ〜」
空を見上げながらそう言えば、呆れたように笑っていた。
「邦広、ほんとどんなお父さんになっちゃうんだろ。すっごい過保護になりそうよ?」
「それ、オレも思う。」
言いながら2人でソファーに腰掛ける。
「調子どう?」
「順調順調。あぁでも邦広がせっかちだから、この子も急いで出てきちゃうかもね?」
「えっ、まじ?」
早く生まれてきて欲しいけど、でもやっぱり、ちゃんと健康で生まれてきてくれるのが一番だからな。
なんて、考えてたら空がハハッと笑った。
「邦広の頭の悪いの、遺伝したらどうしよう。」
「ヒドいヒドい。大丈夫、空が頭良いから。」
意地悪な顔を浮かべる空に悲しいことを言われて、思わず縮こまる。
「うーん、じゃあ邦広の優しいの、たくさん貰って欲しいね。私は優しくないから。」
「2人の良いとこ、良い感じに遺伝してくれるはず。」
根拠のない話をする。
最近はこんな会話が幸せでしかたない。
多分、お腹の子もこんな親バカ2人の話を聞いているだろう。
「バレーさせたい?」
不意に聞かれて迷わず答える。
「したいようにさせたい。」
空は驚いたように目を丸くさせる。
「へぇ…」
「でもたぶん、バレーしたいって言うと思う。」
笑いながらそう言えば、空は丸くしていた目をぱちぱちとさせた。
「(言わせるつもりなのかな…)」
「あ、空、寒くない?」
「うん、大丈夫。ありがとう。」
オレは空の大きなお腹に手を当てながら小さく息をついた。
「邦広今日はお疲れですかな?」
空がオレの顔をのぞき込みながら言ってきた。
なんだか違和感のある言葉を使って。
「んー、疲れてたはずなんだけど、今別にって感じかなぁ。」
そう言えば、疲れなんてぶっ飛んだな。
オレにとって、この2人の存在はデカい。
今まで感じたことのないくらいの強さみたいなものが、溢れてくるみたいだ。
「わあっ」
空がお腹を押さえて驚いた声をあげた。
「え?なに、どうした?」
「すっごい動く、動いてる。」
空が嬉しそうに笑いながらそんなことを言うから、少し安心してオレも空のお腹へと手を添える。
「うおーっ」
手のひらに伝わる息吹。
「この子も応援してるよ。パパがんばってーって。」
お腹に添えるオレの手に、空の暖かい手が重なる。
「やべー…」
何て表せば良いのか分からずに、言いながら首を振り眉を寄せた。
「オレね、今分かった。」
「ん?何?」
「空と、この子。2人のためなら、なんでも出来る。」
「ふふ、頼もしい。」
「今までさ、キャプテンとかエースとか日の丸とか、色んなん背負ってきたけど、こんな気持ち初めてだ。」
そう伝えると、空が満足そうに微笑んだ。
「お父さんらしくなっちゃって。」
「てかさ、空すごいよな。」
「なにが?」
「すごい。」
「だからなにが、」
唇を尖らして聞いてくる空の頬に口付けた。
命を授かって直ぐに、オレよりももっと前に、覚悟を決めて決心もしていたんだろう。
オレが全くなかった訳じゃないけど、ここまで実感したのは今が初めてだ。
それに、女の人ってすてきだよな。
あー、泣きそうだ。
たぶん男に出来ることはこの先もずっと、女の人に比べたらちっぽけなままだ。
だけど、悲しむことではない。
オレが出来ることを精一杯やって、2人を幸せにしよう。
「幸せにする。」
そう伝えたら、空は
「支えます。」
って落ち着いて言ってくれた。
人は背負うものがあれば強くなれるらしい。
その意味が、理由が、今ならはっきりと分かる。
それがまた、言葉に出来ないことも分かる。
死ぬまでに、たくさん2人を抱きしめて
愛してるよってたくさん伝えようと思う。
エンド
アトガキ
すてきなリクをありがとうございました!続編とのことで、もう生まれてきてもらおうかとも思ったのですが、そうなってきますと子供のお名前だとか色々とどうしよう、となりまして、このような形にさせて頂きました。なんだか視点を変えただけのようになってしまいました。イメージと違っていましたら申し訳ありません!最後まで読んで頂きありがとうございました!