夏のこの日は


浴衣と君と花火と私。

you me




「はい、うちわ。」



「あーありがとう。」



私はたかあきにうちわを差し出した。




相変わらずのほほんとした雰囲気を醸し出すたかあきは浴衣がとても似合ってる。



もっとたくさん喋りたい。
近づきたい。

でもなんだろう、
今日のたかあきはいつもと違う。


明らかに、目を合わせてくれない。




「花火まだかな?」



「……もう少ししたら始まると思うよ。」




もしもーしなんか反応遅くないですか、大丈夫ですかー?



こんな時は、私らしく、直球で聞くしかないって思うけど、どうしようどうしよう、浴衣似合わないのかなぁ、楽しくないのかなぁ、たかあきは果たして、私の直球に空振り三振しちゃうのか、ホームランかっ飛ばしちゃうのか、いやいやもしかしたら、バントという意外な展開になるのかもしれない。


って違う、違う違う。
野球じゃないバレーだ。



そうゆう問題でもない。



横を見れば、相変わらず変な様子のたかあき。



「たかあき、何か今日変じゃない?」



気になるものは気になるのよ!



「えっ!?あ〜…え、そう?」



おーいまじですか、その焦りガチですか。あからさまではないですか、たかあき君。




「何か隠してる?」



寂しいじゃないのよ。隠し事なんてヤだ。



私は目を反らすたかあきの目をじっとみて、視線をあわせた。



「あ、や。隠し事とかじゃなくて…」



「じゃあ何?」



たかあきは、困ったように眉を下げて「その、」と呟き続けた。



「空の浴衣姿、可愛過ぎて……」




暗くて表情がよく分からなかったけど、すごく可愛い声だった。



私はそんな彼に、思いもよらないくらいに、不覚にも身体中の体温が上がった。




「ほんとっ?!」



でも、素直に


嬉しくて。




「…うん。かなり。」




やっと目を合わせてくれた。



「たかあきも超似合ってるし!」


「ありがとう。」



たかあきの目を見れば、自然とあふれだす感情がある。



「…たかあき、だいすき。」



「俺も、空大好きだよ。」





見つめあった私達は、

ゆっくりと目を閉じて


浅く、長く、甘く

キスをした。




…ひゅーっ



――ぱーんっ☆





二人の背に
大きく花火は咲いた。










(あなたとなら、どんな困難も乗り越えられるよ。)








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