ヴー…、ヴー…
夜中、といっても1時半くらいに、ケータイが震えているのに気付いて目が覚めた。
眠たい目を擦って、眩しい液晶に浮かぶ文字を必死で読み取ると、電話だと言うことに気付いて、しかも、大好きな彼女からだったから、びっくりした。
「も、もしもし!?」
若干声が掠れたが言い直した。
「もしもーし、今から遊びに行ってもいいですかー?」
「はい!?今から!?いーけど…迎えに行くから」
そこまで言った所で、玄関のチャイムが鳴った。
まさか…、いやまさかね。いくらなんでも早すぎるでしょ。てゆうか、空、なんかあったのかな…。
俺はケータイを耳にあてたまま、眼鏡をつけて玄関を開けた。
「着いたよー」
同じように、ケータイを耳にあてている空がそう言った。
また、ケータイからもその声が聞こえて、まだ寝惚けてる俺にとって、頭イカれるんじゃないかななんて思っちゃったわけ。
「着いたよって…、どしたの急に」
「ケータイ切るよ?」
「あ、うん」
至近距離でケータイで会話ってどんだけ金勿体無いんだ、もしくはどんだけ仲悪いカップルだ。と自分で軽く呆れつつも電話を切った。
「なんかあった?」
空を部屋に入れて問いかけたら、けろっとした顔を見せた。
「別に何もないけど?」
それを聞いて、まあ安心だな。
「優ー」
「んっ?」
「寝れなくて…、」
あら誘ってる?
この俺な訳であって、そう思うのもしょうがないとして。可愛いすぎじゃない?どうするかな〜、でもきっと空は純粋な気持ちでここに来てるんだと思うんだ、そこはね、俺も甘えてばっかじゃないし男で彼氏なんだから、ちゃんとわかってんだよね、
でもさ…
「ごめんね」
俺の変な思考回路を止めさせるかのように空は声を出した。
「いーんだよ、」
今俺にはいくつかのカードがあって…
1、食べちゃう
2、大人しく添い寝してあげる
3、空が眠くなるまで相手する
さあ、どうしようか。
3が一番いいのかもだけど、それじゃ電話だけで良かった訳だ。
わざわざ来ちゃったてことは「食べて?(はーと)」のパターン1か、「一緒に寝てくれる?」の俺めっちゃ我慢のパターン2か…、
…、
……2しかないよねー、
空に限って1は無いか〜、
寝るだけ!
我慢だおれっ!
「空、一緒に寝ようか!」
「うんっ」
シングルベッドに二人で寝転んで、空に腕枕してあげた。
やっさしー俺!
ちょっと他愛ない会話してたら、空はすぐ寝息を立て始めた。
「空寝ちゃったの?」
「…、…、」
寝てるー
「喰っちゃうぞー」
試しにそう言ってみたものの、空はすやすやと規則的な寝息をたてている。
生殺しってこうゆうの?
ねぇ、俺はもっとデカイ男になりたいよ…。
あ、器的なハナシだよ?
分身君は十分だから…って誰がそんなハナシしてんだよ。(俺か)
…寝れない。
盛大なため息を吐くことしか出来なかった俺は、ただただ、愛しい空の寝顔を見つめていた。
眠れぬ夜は、側にいよう、
ただそれだけで、
俺が安心させてみせるから。
(我慢も大切だって、先輩言ってたっけ…。)
エンド