「風呂、沸いたで?」






「寒いから入りたくない。」








「じゃあ…一緒に入る?」







「……。」












バ ス タ イ ム










「なんでそうなるのよ。」







「寒いんやろ?」








空が口を尖らせて問うのに対して、おそらく胡散臭いであろう微笑みで返してみた。



暫しげんなりという表現がぴったりといった表情を浮かべている空。








「2人で入れば暖かい。」







後押しするように言うオレの額にはきっと「下心」と書いてあるだろう。





それにも気付かず、「ほんとう?」って怪しげに聞いてくる空は純粋で可愛い。
俺にはないモノをこの子は持っていると思った瞬間。

そんな愛らしい空に頷けば、







「でも、…恥ずかしいなあ。」






俯き呟いた。
悩んでる様だけど、俺と空は今日は絶対一緒に風呂に入るのは決まったことだから。
さっき勝手に決めさせてもらったんやけど。







だって、ずっと一緒におりたいやん。





恥ずかしいがる時点でなんかもう可愛いくてしょうがない。









「ま、先入ってて。」









そう言うと、「はあい」と何を疑う訳でもなく、しょうがなくと言うように返事をして準備をし始めた。








こんな俺を見ていたら言うまでも無いだろうけど、ベタ惚れってやつだ。
空を前にすると柄にもなく冷静さを失う。

いつも平静を装ってはいるけれど、簡単にそれは剥がれ落ちる。






空と出会うまでは、装うとかそうゆうもの以前に、性格として冷静な方な筈だったのに。




しかしバレーに関しては例外だ。いつだってそうだ。冷静に見えて実は燃えたぎっていたり焦っていたりしている。
こんな風にそれを隠すつもりはないけど。







要するに、俺は真面目に空が好きだってゆうこと。










自分を自分の中で理解した、と勝手な自己解決を頭の中で行い、自分も風呂場へと向かった。










さっさと服を脱いで、コンコンと二度程ほとんど無意味に近いノックをして浴室に入る。









「わぁっ!もう!なんで入ってくんのよお!」






湯船に浸かっていた空が大袈裟に驚いて、恥ずかしそうに湯に沈んでいった。










「まぁええやん、な?」








腰に巻いているタオルが落ちないように何度か織り込みながら言えば、「ばか」と呟く声が聞こえた。








湯船からひょっこりと顔を出し、上目遣いでこっちを見ている空。
今日はいかがわしい事をするつもりなんてなかったけど、そんな空を見ていると、なんだかこう、むらむらっと来た。



髪も水気を帯びて、熱いのか頬もピンク色になっていて、いや、逆にむらむらせん方が失礼だと俺は思う。

せや、俺は悪くない。






またこうして自己解決させて自分を肯定する作業をしていたら、何となく視線を感じた。






ここには勿論、俺と空しか居ないわけだから、視線の犯人は分かっていた。








湯気で白っぽくなった視界の先に、さっきよりも頬を赤くさせた空がなんとも言えない顔をしてこっちを見つめていた。






何を考えているのか読みとれないような、ぼーっとしてこっちを見ている。もしかしたら、何にも考えてないのかもしれないけど。空なら十分有り得る。







俺が空を見ているのにも気付かない。







空をよく見たら、視線の先は俺の顔でも俺の後ろの壁でもなかった。





そう、俺の上半身を、何を隠すわけでもなくアツい視線で見ていた。










「空ちゃん?」







わざとらしく、いつもは付けないような「ちゃん」付けで呼んでやれば、焦って視線を泳がせていた。







「なにっ?」








みるみるうちに赤くなる頬に、なんだか少し心配になってきが、そんな空が愛しすぎて顔をぐっと近づけて意地悪してやることにした。










「見惚れてたん?」










しゃがんで湯船の縁に肘をかけてそう言ってやった。


口端がつり上がるのを我慢が出来ない。






もっと焦る空が見たい。
ただそんな風に思って、いたずら心でそう言った、



のに…、

空はというと、相変わらず頬を染めたままヘラリと力の抜けたような笑顔を見せた。







「はは、ばれた?」











ちょっ、まじか。




肩をすくめて首を少し傾がせ、はにかんだように照れながら笑って言う空を前に、逆に俺が赤面。




一瞬フリーズしたけど、吹き出そうになった鼻血をどうにか止めて、口元を片手で覆った。









どんっだけ可愛いねん。







頭の中で呟くと乾いた笑いがこぼれた。








「だって、筋肉すごい。背中のこのへんが…って達哉?」






ようやく俺の状態が変な事に気付いた空が怪訝そうに顔を覗き込んできた。








「可愛い。」






「はい?」





「可愛い可愛いちょー可愛い!」






「はっ?何、どうしたの?てか可愛いくないし!」







「もー、あかんってまじで。」






俺自身意味不明な言葉に空はやっと俺の求めてた程度の反応をしてくれた。






たまらんな。
不意打ちや、あの笑顔は。不意打ちに期待以上なことされると鼻血どころかもうぶっ倒れそうや。







「空、好きやで。」






そう呟くと、空はいたずらっぽく子供のように笑顔になって心底嬉しそうだった。







すると、ばしゃっと言う水温と共に、顔面に大いにお湯をかけられた。




びっしょりと濡れた顔面と前髪を手で適当に拭いたら、同じようにけらけらと笑う空が居た。







「おま、ええんかそんな事して。」







目を細めてそう言ってやれば、空はまだ子供みたいにうきうきした表情を浮かべていたから、俺も湯船に入ってやった。

湯が増えてすこしこぼれた。
狭い湯船で近くなった距離に空は焦っている。








「やーだもう!ばかっ!出ろ!」





「先にケンカ売ってきたんそっちやろう?ちゃーんと責任とりなさい。」













「きゃーっごめん!ごめんなさい!…んむっ」








しっかり口を塞いだ。




あー、かわい。

幸せやな、俺って。












この先どんどん好きになる。

よく分からないけど
そんな自信がある。

君もそうなんだってゆう自信もある。

どうしても大切なモノは
形のないものだから
失いそうで恐いはずなのに、

なんでか、失いそうもない。

一生離れそうもない。


この気持ちを一生覚えていたいなんて思った。
















エンド









アトガキ
長くなりましたが最後まで読んで下さりありがとうございました。えぇっと、とにかくべたべたに惚れてる福澤くんを書きたかったのですが、どうだったでしょうか。クールそうに見えて意外とデレデレみたいな、だけどちょっとSっ気があったり大人な反応だったり、しそうじゃないですか?なんか良いですよね。文才が無くうまく伝えきれない部分があって申し訳ありませんでした。ここまで読んでくださりありがとうございました!
因みに、こんかい福澤くんの言った「可愛い」の回数、8回です。言い過ぎですね。