Very berry










空の目の前には俺がおるのに、空の視線の先は清水にある。



俺は空の事が好きだ。
だけど、空は清水が好きだから、気持ちを伝える気はない。

ないけど、やっぱり腹が立ってまうねん。




「聞いとんかあっ!」




空の頭に軽くチョップを落としてやれば、ムッとしたけど、すぐまた柔らかく笑ってみせた。




「〜…ごめんごめん!」





頭をさすりながらそう謝る空の大きめの瞳が漸くこっちに向いた。







「ったく、好っきやなぁ…」





ため息混じりにそう言ってやれば、何を恥じる訳でもなく、照れたように頬を赤くして笑っていた。


これだから憎めへん。
変にヒステリックにもならんで済む。



だけど、どこか、じれったい。







「どうなん?最近。」




空の隣でそう問いかけてみる。


ほんまは聞きたくない話やねんけど、まだ空と話しておきたいってゆう、すごい不純な理由で。





でもやっぱり俺の問いに喜んで答えてくれる。






「いつもどおりっ!悪くはなってないかなあ。」





肩をすくめて、少し口元を曲げながらそう答えた。





「進展ないやんか。」




冗談混じりで軽い毒を吐く。





「そうなんだよねえ…」






ふぅっと息を尽きながら呟く。
白い肌は薄い桜色に染まっていて、長い睫毛が悩ましげに揺れる。




足の裏に感じるボールの跳ねる振動が、やけに大きく思える。
ゆったりとした空間が更にスローになる。
こんな瞬間がいつも俺の胸を突く。









「俺にしてもーたらええねん。」









空の顔を見ないで言ってみた。
別に何を考える訳でもなく。
だって、後からどうにでもなる気がするから。
例えば、はぐらかせるし、笑えるし、曖昧のままにしてみても別にいい。



空には好きな奴おるから。
気にせんやろな。











言った後から心臓がバクバクしてきたのが分かった。




余りにも向こうの反応が無かったから、隣に目を向けた。





そしたら、なんと。

そこに居るはずの空は居らず。







「はあ?」






残っているのはふわふわと微かに空の香りだけ。





俺は恥ずかしすぎて、口元を片手で覆った。






「なんやねん、もー…。」







ただうなだれるしか出来ひんやないか。
空気に告ってもうた。










「どしたのゆきち?」






前から聞こえる清水の声。

とりあえず彼の頭を殴って(叩いて)おいた。



「いだっ!なに!?」




「なんでもない。」







「やつあたりー」とかってブツクサ言う清水を横に俺は軽く決心した。

それから清水は先輩に呼ばれて、先輩の元へと行った。











もう誰が好きとか関係ないわ。





真っ直ぐ、言ってみよう。









俺からちょっと遠くに空がおる。


空気を鼻から深く吸う。
口から息を吐けば、
また軽く吸う。



きちんと聞こえるように口の横にに手を当てて、大きめの声で言った。










「空、好きやで!」









振り向いた彼女は真っ赤な顔をして、予想外すぎる程の反応だった。






思ったより真剣で、思ったよりも可愛かった。






「そうゆうことやからっ」





笑顔で言ってみたら、空も困ったように笑っていた。

今度はちゃんと聞こえたらしい。
俺の方はもう、はぐらかそうとかそんな気も無い。



笑い方がどうであろうとスッキリした俺はまた、どっかの王様みたいに歩いて見せて帰る事にした。









今後の関係がどうなろうがもう今更知ったこっちゃない。

これで少しでも俺のこと、恋愛対象で見てくれたらいい。




好きなんやもん、しょうがないやん。























(ダサい俺は俺ちゃうねん!!)




エンド





アトガキ
爽やかにしたかったんですがどうでしょう?最初はジメついてますなぁ。うだうだな自分にイライラして言ってしまった、みたいな感じです(笑)ここまで読んでくださりありがとうございました!