ネットに平行に飛んだと思われたボールに、前衛陣のブロックは見事に振られた。
ノーマークになったセンターの速攻は、構えた俺の前に落ちる、
低い姿勢で手を伸ばす。
「いっ…!!」
ボールの感触と共に、親指の先に痛みが走った。
咄嗟に痛んだ手を振ったら、血が飛んだ。
「うっそやん、血ぃでとるし‥」
そう呟いて、散った血を急いで雑巾で吹く。
「大丈夫ゆきち!?結構血ぃでてる!!」
マネージャーの空が走って寄ってきた。
「爪割れてるじゃんっ」
まじや‥、
いったーっ
傷を見て痛さが増した俺はなかなかガキやなとか思う。
空が手当てをしてくれる。
久しぶりに触れる空の手。
前に触れた時は、繋いだ手。
離したのは、俺からでも空からでもない。
ただ、すっと音もなく崩れるかのように離れた。
「…達哉?」
「えっ?あ?」
「だからぁ、今日はバレー出来ないよって。」
「まじでっ!?」
まるで、自分の事みたいに俺の傷を見つめる空。
目は、あの時と同じでうるんでて、
手の温もりと震えかたも同じで。
あぁ、
傷口が脈打つ。
ちりちりと痛む。
「いってぇ…。」
胸?
心臓?
「ごめん、」
ついついぼやいた俺に謝った空の声は聞こえないふりをした。
指もいたいけど
胸のほうが
心のほうが
ずっといたかった
(謝らせてごめんな。)
エンド
アトガキ
最後の言葉はゆきちくんの一言です。この後、二人して無理して明るくなってるイメージです。部内恋愛によくありそうな1場面。中途半端すぎておもんないですね。でも頑張って書きました。ここまで読んで下さりありがとうございました。次は甘ったるいの書きたいです。