良い青。


良い空。



この空模様もこの時間も
あなたも
愛しているよ。








「達哉ー」




達哉の横を歩きながら、名前を呼んだら、達哉は黙って私を見た。

「ん?」ってたぶん言ったんだ。
車が通ったから聞こえなかったけど、よく分かった。





「達哉ってこれまで何人に告られたあ?」




「なんやねん急に、」





達哉の一歩は私の二歩になるから、達哉はゆっくりゆっくり歩いてくれる。



ポッケに突っ込んでた手を出して、苦笑しながら指折り数える。





親指と人差し指を曲げたら、達哉はまた笑った。





「分からん。数えへんやん!」





無邪気なのにどっか大人っぽい顔で笑う達哉に、私の体温がちょっと上がった気がした。






「じゃあさ、何人に告った?」






意地悪な顔が、達哉にはバレたかな。



たまに試すような事言っちゃうのは、
不安になっちゃう時があるから。
達哉はいつでも優しいから、私の不安は消えないんだよ。


いつかこんなイタズラに、達哉だってウンザリしちゃうんじゃないかって思うのに、怖くないのは、きっと、

きっと…







「空、」




「ん?」




「過去見んで。今は、」



達哉は一言だけ残して、一呼吸置いて、



私の手を取った。









「…今は、今の俺だけを見てくれたらえーねん!」





そう言いながら、指を絡ませる。






隣の達哉を見上げたら、ちょっと恥ずかしそうな顔をした。






そして、足を止めて、達哉は私の目の前に立つ。
繋いだ手は、持ち上げれて、達哉の大きな手は、私の顔の横に上がった。









「空のおらん過去なんていらん。」







バレー以外の時では、珍しく見る達哉の真面目な顔。


私の大好きな声が、愛しい言葉を言った後、またいつものようにヘラッて笑ったんだ。






こんなに近くに居るのに
もっともっと近くに行きたいの。



もう触れてるのに
もっともっと触れていたいの。



大好きな達哉はここに居るのに
幸せな事してるのに、幸せ過ぎて、欲があふれ出ちゃう。
切なくなっちゃう。






「達哉、」




「空、キスしてい?」






私が切ない顔をしたのを、達哉は気付いたんだろう。
それでも大切に大切にそう聞いた。


私は黙って頷いて、目を閉じた。






優しく触れる唇。



心から、愛しいと感じた瞬間。





きっと死ぬ前になって、やっと満足するんだと思う。


こんな私。





それでも好きで居てくれる達哉が好き。



ウンザリしたっていいよ。
私の事嫌いになったりされるのも怖くないよ。




だって
私は達哉のこと一生好きでいる自信がある。






「だいすき…」





「空、一生離さへんからな」







それに、
大好きな達哉の言葉を疑えない。
信じてるから。















あぁ、
あなたを愛してるよ。




あなたの後ろの景色も
あなたの見る景色も
あなたが愛する私も


二人をつつむこの空も






全部愛してる。















エンド