君の涙が本当に美しくて、
ばかなオレにはなんてゆう言葉に現せば良いのかなんて、分かるわけもなかった。
トラジック
雨も土砂降り、時折聞こえる腹に響くような雷の音。
そんな天気でどこに行くのにもダルくなるような今日という日は空と家でまったり過ごすことにした。
ソファーを背もたれにして2人並んで座ってテレビを見ていたんだけど、雷の音に空の肩が少しだけ震えているのを感じた。
空は喜怒哀楽ってやつが薄い子だから、雷を恐がっているのもこうして黙ったまま小さく震えるだけ。
別に気付かれないようにしている訳では無いと思う。
本当に反応が薄いだけで。
テレビを見ているフリをして、空観察をしているところで、一発デカい雷が聞こえた。
こりゃどっか落ちたなあ。
外をぼーっと眺めていたら目に入った空はギュッと目を瞑っていた。
「びっくりしたぁ…」
そう呟く空。
「こわい?」
そう聞いて、肩を抱いてやれば、こくこくと頷くから、肩に回してた腕で頭を撫でてやった。
あ、良いこと思いついた。
手元にあるカバンを探った。
確かここに入れてるはず。
あ、あったあった。
オレは音楽器機をとりだしてイヤホンの片方を空に渡した。
「一緒に聞こう。音、おっきくしてたら、雷なんて忘れるよ。」
半ばふざけて笑いながら言ってみたら、そのままイヤホンを耳にはめた空。
だから俺はなんとなく、前回聞いていたものの続きを流して、オレ自身も耳にそれをはめた。
テレビを消して、音楽を大人しく聞く。
空はオレにもたれているから、頭をもう一度撫でた。
3曲目。
少し深くて、かなり切ない曲。
なんだかこう、嫌な気持ちになった訳ではないけど、違和感が胸の中にあるような感じがした。
こんな曲を彼女と聞くとなると、どこか不安を煽られるような気がして怖くなる。
いつか、オレらにも別れがくんのかな。
ちょっとだけ頭を過ぎった。
そんな事を考えていたら、ふと、空の表情が気になって顔を覗き込んでみた。
はっきり言って驚愕だ。
空は静かに、こらえる訳でもなく、拭う訳でもなく、涙を流していたのだから。
「空?」
そう呼べば、空は薄く微笑んだ。
そんな空があまりに綺麗で、オレまで泣きそうになったから笑っといた。
この曲の結末。
この曲の気持ち。
全てを重ねて流した涙なのかな。
「別れたくない。」
そう呟いたのを聞き逃さなかった。
「別れない。」
たぶんオレは困った顔をして、そう返してやるのに相変わらず空の涙は留まらなくて。
「別れる理由以上に、別れない理由たくさん探すから。見つけるから。…教えてあげるから。」
「大丈夫」と言って肩を強く抱いたら、今度は嬉しそうに泣き笑いするから、頭をオレに寄せた。
「ありがと。」
あまりにもはっきりとそう空は言った。
「別れ」を意識することも大切だと思った。
何にも怖いことなんてなかった。
不安なのは同じだった。
だからこそ変わった気持ちがあるし、
だからこそ信じれる思いがある。
どこか安心したオレはふと外を見た。
「あ、雨…」
いつの間にか止んでる空を見て、満足そうにオレは笑った。
そしたら空もつられるようにして笑ってたんだ。
例えば、僕と君が離れなきゃならない環境が2人に訪れたとしても、
僕は必ず、離れちゃいけない環境を作ってみせるから。
エンド