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(カケル ゼロ)







こんなコト、思うようなことは無かったのに。



私は邦広と付き合ってから、性格が変わってしまった気がする。
だから、邦広が好きな私ももう居ないのかもしれないって少しだけ不安になる。





邦広が他の女の子と喋ってたら、イライラするんだ。
特にあのマネージャーさん。



絶対あの子、邦広の事好きなんだ。
私から盗ろうとしてるんだ。

邦広も、あんなに楽しそうに喋って、
あんなに近くで話して、満更でもないんだよ、きっと。
もう私の事より…


そんな風に、勝手に想像して勝手に苛ついてる。




私は嫌な女だ。






「空?」




「あ、邦広、帰ろ」




考え事をしていたら、いつの間にか来ていた彼に気づいて、イライラを胸に残したまま会うことになった。




私はぐいっと邦広の太い腕を掴んだ。




ぐいぐいと引っ張って早歩きをする。
邦広の半歩程前を歩く。




こんな風に、自分の気持ちを外に出して、ガキみたい。
ただ悲しいだけなのに。





「ちょ、空!?…どうした?急ぎ?」




「急ぎじゃないっ」



「……怒ってる?」



「怒ってない!」



「怒ってるやん、」



「怒ってないってばっ」






もうイライラするなあ。
ほっといてよ。

って、腕握ってるの私なんだけど。






すると、邦広の腕を握ってた私の腕を、邦広が捕まえた。




だからもう先に進む事は遮られていきなり引き寄せられた。





ぎゅっと肩を強く抱かれて、わたしの腕は行く宛もなく胸の前で折り込まれた。






こんなに強引な邦広は初めてで、心臓がドキドキ脈打つ。
顔に熱も溜まったし、頭も真っ白になった。こんなの初めてだ。






「…怒ってるよ。」





微かに笑いながら言ってきたのが分かる。
顔は見えないけど、困った様に眉を下げながら笑っている、想像がつく。






「お、怒ってないし…。」






声が裏返りそうだったから、無駄に低い声になってしまった。





「なんで?」






聞こえて無かったのか、私が怒っている前提で問いかけてくる。

またその声がやけに優しくて、胸を抓られた気になる。






「だからっ……ッ!」





怒ってないってば


そう言おうと思っていたら、突然唇を塞がれた。
私の言葉を遮る様に、強引に食いつくようなキスだ。


思ったよりも大人な口付けにまた、驚いた。







「なんかあったんでしょ?何?」





唇を離されていた時に目を見られてそう言われたから、言葉がすぐにでなかった。







「……、」






黙っていたら、いつもの柔らかな笑顔を首を傾がせながら「ん?」と言ってきたから、話すしかなかった。








「…だって、邦広女の子と仲良い、じゃん?」






「…女の子?」





「マネージャーさん…」







あぁ、いくら優しい邦広でも絶対軽蔑した。絶対引いた。悪い女って思われた。







もう、泣きそう。






「…ごめ、」






謝ろうとしたその時。







「妬いたんだ?」







何とも嬉しそうな笑顔が見られた。







…妬いてた、のかな?わたし。






「あはは、なんか照れるね。」






また力強く抱き締めた邦広は陽気に笑い出した。




なんだか恥ずかしい。





「ちょっと!邦広、喜んばないでよっ」





「うん、分かった、もう仲良くしないよ。」




「ほんとに分かってんの?仲良くしないってねぇ、そんなの言うだけなら簡単よ?」




私はこれでもかと言う程に眉間に皺を寄せながら、説教みたく言った。

それでも邦広はニコニコとしていて「はいはい」と言わんばかりにいかにもテキトウに頷いている。

更には頭を撫で始める。








「おれが好きなのは、空だけだ。…不安にさせてごめんな?」








額とゆうより前髪に彼の唇が触れた。

私はそのまま体を預けてみた。








あぁ私、嫉妬する程好きになっちゃってたんだね。













かけ算は、何にゼロを掛けても答えはゼロ。
たとえ100でも0を掛けたら結局0のまま。

だけど、少しでも0から増えれば答えが大きくなれる。




初めはゼロだった想いはどんどん増えていくの。
私達、どちらかがゼロだったら意味がない。
私達、どちらかの想いが強くなればなる程、もうひとりの想いまで増していくの。

ゼロは掛からないよ。
ムカついても、嫌いにはならないよ。
ゼロに見えて本当は違う筈だから。

















エンド




アトガキ
意味不明になってしまいました。すいません、書き直し予定あります。ここまで読んでくださりありがとうございました。