朝がきたよ。
モーニン
隣で眠る邦広を見つめ、なんだか幸せな気持ちになった。
開けっ放しのカーテンから光が差し込み、目を細める。
眉間に少しシワがよって、肌が汗ばんでいた。
どんな夢を見てるんだろう。
子供みたいでちょっと可愛い。
だけど、どこか苦しそうで、こっちまで何故か切なくなった。
こんなに近くに居るのに、私の頭は今、邦広の逞しい腕の上に乗ってるのに、なんで同じ夢は見れないんだろうって。
「暑いのかな」
口の中で呟き、邦広が起きたらいけないからこっそりと布団からでて、ドアを網戸にした。
すると心地よい風がレースのカーテンを膨らませた。
涼しかったからもう少しそこに立っておきたかったけど、何にも着ていない状態の私な訳で、すぐに布団へと戻る。
また同じ様に、邦広の腕に頭を乗せて丸くなる。
まだ苦しそうな顔をしている。
バレーの夢かな。怪我しちゃう夢とか?
邦広は夢はあんまり見ないらしい。
たまに見る夢はバレーの夢何だって言っていた。だからうたた寝の時は体がビクってなったり、動いたりしちゃうんだって。
とにかく、可哀想で、頭を軽く撫でてあげた。
サラサラな髪。すごくふわふわで、女の私には羨ましい限りのものだ。
何度か撫でていたら、ぴくりと瞼が動き睫毛が揺れた。
その瞬間、両手でぎゅっと抱き寄せられた。
肩を抱く大きな手がやっぱり汗ばんでる。
「…邦広?」
久しぶりに声を出したからか少し声が掠れた。
聞こえていないのか、それともまだ寝ているのか返事は無い。
それでも苦しい程に抱きしめれれている。
「邦広?」
どんどん強くなる腕の力に、少し痛みを覚えて、もう一度名前を呼んだ。
すると小さく唸った邦広の腕の力は急に弱くなった。
顔を上げて邦広を見ると、薄く眼を開き虚ろな状態だった。
「朝だよ?」
そう言えば、ふわりと微笑み、掠れた低い声で
「おはよ」
と返してきた。いつもの邦広だった。
「どんな夢見てた?」
「ん…、覚えてないな…」
まだ随分と眠たそうだけど、また寝たら続きを見るんじゃないかと思って、寝させまいと思う。
「寝ちゃだめ、起きて、おはよう!」
「ん?んん。」
胸板をぺちぺちと叩くと、分かった分かった、と頭を撫でてくれた。
「本当に夢覚えてないの?」
「なんか、ちょっと…良い夢じゃ、無かったかな…」
まだ眠たそうだ。言葉が覚束ないのはそのせいだ。でも微笑みながら話している。
こんな風にいつも笑顔でいてくれる辺りがなんだか、いつもは子供のようなくせに大人っぽく見える。
「…どんな夢かとかは、覚えてないけど…なんか嫌な夢だった気が残ってる、」
やっぱりそうだったんだ。
「でもな、」
そう言い一呼吸を置いた邦広。
その間に一つ大きな風が吹いた。
「起きた時、空が居てくれたら、急に幸せでしかなくなった。」
乾いた声で照れたように笑う邦広につられて私も笑ってしまった。
「だから、そんな心配そうな顔せんでええよ。」
あぁ、
何て愛しいことを言ってくれるんだろう。
こんなに私を理解してくれてるなんて、私が何をやってもダメみたいだ。
「愛してる」よりももっともっと甘い何かを見つけた気がする。
そのまま前髪に口を寄せてきた。
「良い朝だ。」
私が呟くと、邦広は私に半分だけ覆い被さり、かかるく唇にキスをした。
今日はずっとこのままがいいな。
エンド