目と目が合った、その瞬間に


恋だ、と思った。










ベ ス ト










高校生の私は、今回のこの4泊の合宿で、とても大切なことをたくさん学んだ。

それは、バレーの技術はもちろん、心構えや気持ちの持ち方とか。



引退まで後約半年の私に今出来ること。それはスキルを少しでも伸ばすこともそうだけど、それは時間のかかることだから、根性と気持ちをどれだけ高めるかという所にあると思う。





今回の合宿では、特別に大学生の男子バレーの方が指導してくださっていた。









そこで、私はこんな大切な時期に、一目で恋に落ちた。







清水さん。
私意外の人にもたくさん声をかけて教えてるけど、どうしても私は無意識に清水さんのところに行ってしまっているのか、他の子よりもたくさん教えてもらえてる気がする。





バレー意外のこともたくさん話せるようになっちゃった。





ほんとに、こんなに浮かれちゃってダメすぎるなぁ私。





自分に失望して溜まった息を思いっきり吐いた。




「疲れた?」








低く響く声にビクッと肩が震えてしまった。

隣を見ると、清水さんが首を傾がせながら聞いてきた。








「いっいやっ!べべべつにっ」





カッコ悪いくらい焦る私に向けて、無邪気に笑ってきた。


そんな子供みたいな表情に、私の気持ちも少し和んだ。








「そう?…もうちょっと腰落として、」







今アップ中、と言うわけで考え事をしていた私は、そんな注意を受けてしまった。






また焦りを取り戻した私は、腰をしっかりと落とした。







「今度は上体が前屈みだから、胸張って?」






「はい!…ん、こう、ですか?」





なんとなくやりにくくて、そう問うと清水さんも、難しそうな表情を浮かべていた。







「腰から起こす意識、」







そう言って私の横腹を両手で掴んだ清水さん。





くすぐったいけどそれどころじゃないくらい心臓がばくばく鳴った。







清水さんの手のぬくもりが、私の体にふれてるなんてっ。










「こら。そんな顔しないの。こっちが悪いことしてるみたいやん。」









手を離した清水さんは困ったように微笑みながらそう言って私の頭を軽く小突いた。








こんな顔!?
どんな顔!?
私今どんな顔したのっ!?






「すっいません…」






清水さんを見上げてそう謝ると、清水さんは「はい頑張って」と言って余所へ行ってしまった。












―――――,



1日の練習が終わり、ストレッチの最中に清水さんは隣に来てくれた。


こんなことで喜ぶような子供な私のことなんて、相手にしてくれる訳無いって分かってるけど、やっぱりこの合宿だけでサヨナラなんてやだな。








「空ちゃん、ぼーっとしすぎでしょ」







「えっ、」






「ん?」






「名前、覚えてくれてるんですかっ!?」







それが嬉しくて、ついつい身を乗り出してそう聞いたら、清水さんは目をまん丸くしてキョトンとしていた。







「うん、まぁ…同じチームの子が呼んでたから。」






少しだけ笑ってそう言ってくれた。




「嬉しいですっ!」



こんなこと言って良いのか分からないけど、思いっきり言い切ってしまった。





すると、清水さんは人差し指を口にあてがって、「しぃーっ」と言った。


興奮しすぎちゃった、声大きかったんだな…。
恥ずかしい。
てゆうか、嫌がられちゃう、よね?







「すいません…」






そう言って清水さんの顔を見ると、思いもよらない顔をしていたんだ。







顔を真っ赤にして、目をあわせてくれない。
どこか照れてるみたいだった。






可愛いすぎるよ。
もう本当に、私は好きになっちゃってるみたいだ。









そんなことを考えている間にストレッチは終わって、本日の練習は終わった。





この合宿も明日で終わりだなんて、早すぎるような気がしてならなかった。





私は15分程のお風呂から上がり、みんなと一緒に部屋に戻っていた。











すると、向こうから清水さん。
こっちを見つけて、ふわり、微笑んだ。
そんな仕草に私の胸はまたきゅうっと締め付けられて、忽ち見惚れてしまって反応出来ずにいた。









「髪、めっちゃ濡れてる」








笑いながらそう言うと、私が首にかけてたタオルを持って、優しく髪を拭いてくれた。





大きな手が、私の短い髪を乱す。






なんでか涙が出そうになって、目を伏せる。

切なさとか、嬉しさが入り混じる。





そんなに優しくしないで。

私、ガキだから、すぐ勘違いしちゃうんだから。









「し、清水さん……」





「んー?」







「…期待しちゃいます……なんて、ね…」








控えめに言った。びっくりするくらい声が小さかった。
言わなけりゃよかった。





清水さんが困った顔をした気がした。










「期待?しても良いと思うよ。」








「えっ?」









思いもよらない言葉に驚いて、ばっと清水さんの顔を見上げた。


目が合うと、無邪気に微笑んでくれた。











「一番がんばってる君が好き。」













頭をかるく撫でながら言ってくれた。




















決して目立つ選手じゃない。

とびきり上手な訳でもない。

不器用だし、特にすごいことをしてる訳じゃないのに

一番目立つ。

一番がんばってる。

ねぇ、今までのオレには持ってなかったものを、君は持ってるでしょ?

もっと詳しく教えて。

不器用で真っ直ぐな空に惹かれたんだ。


















エンド






アトガキ

長くなってしまい申し訳ないです。だらだらとまとまりのない駄文をここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。実はまだまだ長い予定だったんですが、最後ぎゅっとしてしまいました^^;合宿の最終日どうした、って感じになってしまいました…。ごめんなさい!