SNOW WORLD
練習帰り、夕方なのにもう外は暗くなっていた。
鼻を赤くさせて、一生懸命に楽しそうに話す空。
突然、ふと喋るのを止めて暫し考え込みはじめた空にオレは疑問しかなかった。
「あれ?この話、前もしたっけ?」
「ん?多分聞いてないよ?」
ぶっちゃけさっきの話、ちゃんと聞いてなかった。
それより、寒くないかとか、今日の服装とか、他の事考えていた。
「え〜、話した気がする!」
「じゃ聞いたのかも。」
笑いながら曖昧な返事を返すと、口をへの時に曲げて少しだけ怒ったようだった。
話、覚えてないの?言い出すのが思い浮かべられる。
拗ねたように口元を尖らせて、皮肉に目を細めながらこっちを見ながら言うんだ。
そんな思い浮かべられた空が今実際に、怖いくらい同じ情景で目の前で起こった。
彼女の話の内容って、そりゃもちろん大切だけど、本当は歩幅とか、気にすることが沢山あってあんまりちゃんと聞けないんだ。
それから、空の楽しそうにしている姿に見とれてる。
「あ!邦広、雪だよ雪ッ」
空が空を見上げ指さした。
その細い指は赤くて寒そうだった。
そんな指に雪がぴたり、とまった。
その手をオレは黙って両手で包んだ。
「手袋、ないの?」
そう問うと、空はふわりと微笑んで頷いた。
「あ、そうだ、オレのつけとき。」
ポケットにスポーツ用の手袋があることを思い出し、取り出して片方をつけてあげた。
「あはは、おっきい手袋。ありがとう。」
グーしたりパーしたりを繰り返しながら笑って感触を確かめる空。
もう片方も填めてあげようとしたら、それは拒んできた。
「片っぽだけで大丈夫よ。もう一つは邦広がつけといて?」
遠慮がちにこちらを覗くように見て、片方の手を引っ込めた。
「じゃあ、もう一個はオレがつけよっかな。」
遠慮ばかりの彼女はいつだって気を使ってくる。
そんなの要らないのに。
性格ならしょうがないか。
そんなとこも、オレは好きだからいいけど。
そんなことを考えながら、片方の手に手袋をはめた。
歩いているうちに、この不自然な手袋のおかげで、とっておきを思いついた。
「空、」
名前をよぶと「ん?」と言って、マフラーに埋めてた顎を上げた。
オレは何も言わずに空の裸の手のひらを握った。
そしてそのまま手を握ったまま自分のポケットに滑り込ませた。
オレのポケットの中は、さっきまでオレひとりの手が入っていたから、十分に暖まっていた。
「あったかい…。」
空は照れながら笑ってそう言った。
「ずっと暖めてたから。」
得意になってオレも笑った。
「手、繋ぎたかったけど、邦広、ポッケに入れてたから…」
上目使いにオレを見ながら「ちょっと寂しかった」なんて言ってきたから、空の頭を軽く撫でてやった。
「だけど…暖めてくれてたんだね。」
頭を撫でると同時に空はまたマフラーに口元を埋めた。
だけど、嬉しそうに笑ってるのが分かった。
空の一回一回する動作のひとつひとつがオレの胸を活動的にさせてくる。
「ありがとう。」
何でもない言葉。
だけど、何でか分からないけど切なくなった。
そんな時はすぐに抱きしめたいんだ。
だからオレは考えなしに空を抱きしめた。
片手で肩を抱いて、もう片方は空と指を絡ませたままで。
「空?」
「好きだよ。」
オレが言おうとした言葉を先に言われて苦く笑って見せて言った。
「オレも一緒。」
そして、空が切ない目で見つめてきた時は、キスをねだるサイン。
オレは勝手にそう思っている。
空の前髪に乗ってる雪に口付けて、その後、冷えて赤くなった鼻に軽く唇をつけた。
くすぐったそうに空がはにかむと、つられて笑ってしまった。
空に少し長めのキスをする。
離したとき、白い息がもれた。
それさえも、やけに愛しくなった。
だから、もう一回。
そんなことを繰り返したばかなオレ達の幸せな冬の日。
エンド
アトガキ
ここまで読んで下さりありがとうございました。
眠すぎて最後の方は記憶にありません。と、いうことで書き直し予定有りの方向です。書き直したらまた連絡させていただきます。