大切なことって
準備して言うんじゃなくて

もっと突然で

そこに準備出来たものといえば、









夕日くらい









6月って、ウェディングシーズンらしい。


だからって訳やない。

そんなノリでこんな大切な事言わへんし。



まあたまたま、オレと空との記念日が6月やったのもあって。

オレは今世紀最大の決断をしようとしていた。








そう、


プロポーズ。






高校んときから付き合ってるから、もう良い時期だろうと思う。










もう、奮発して指輪も買ってんで。
いつでも準備OKやねんで。
いつでもかかってこい的な状態やねんけど、って何で受け身やねんな。
そっか、オレから行くんやったな。
かかっていくのは空じゃなくオレや。








「達哉最近うわのそらー」




空がつまんなそうにオレを睨んで、項垂れた。







「いやっ!そんなことないでっ!?」





バレると思って焦ったのが自分でも良くわかって情けなくなる。





「そんなことあるしー」






まぁいーや、と呟いた空を見ると、ええんや、とかって言い返したくなったけど、ほっと胸を撫で下ろした。









――――――







練習が終わって、さあ帰ろうと思って体育館を出たら、空が居た。








「どしたん!?」






「達哉迎えに来てあげたー」





「はあ?びっくりしたやん、」





けたけたと笑いながら、相変わらずのんびりとしつつも何処か男らしさみたいなものを漂わせる空。

サプラーイズ♪とか言いながら上機嫌にオレの手を取って歩き出した。







「空暇人。」





「うるさいなあ、」





「図星やんけ!」





「いーじゃない別に。暇なのは悪いことじゃないし?」






まぁそうやな。
暇じゃなかったら来てくれてない訳やし。





「いっそ羨ましいくらいやわ。」






「でしょー」







空を見たら憎たらしい顔して笑ってた。



この、憎たらしい笑顔がどうも、愛しい。








「達哉あ、こないだ記念日だったじゃん?」






「あー」






「言いそびれたことあってさ、」






「ん?」








「達哉に、好きだよって言い忘れてた。」







そいえばそうやな。





って




「あほか」







笑ってしもた。






オレが笑ってたら空も笑ったけど、握ってた手にギュッと力を込めてきた。






それを合図に自然に足を止めた。








「どんなタイミングで言うねん!」





「記念日言いそびれたんだもん。」









「なぁなぁ、キスしてええ?」







いつもふざけて確認する。
そしたら、空は返事の代わりに目を瞑る。










道のど真ん中で、空に口付けた。









したら、どこかいつもと違う。
空がすがり付くみたいに、オレの首に腕を絡まそうとする。







だから何回かキスを重ねた。









愛しくて仕方ない。






離れた時の恥ずかしそうな笑顔とか、
ぜんぶ愛してたまらん。












「なぁ空、」






「ん?」















「結婚、しぃひん?」













格好なんかつかんし、用意した言葉も皆無。
指輪も今は無いし、言おうと決めて言った訳でもない。



ただ自然に、こぼれた。











「しよっか。」








空の少し震えた声がまた愛しすぎて抱き締めた。










「ばか、超変なタイミング。」









「記念日に言いそびれたねん。」









また二人して笑った。










繋がる二つの影を見て、
空の幸せそうな横顔を見て、
「夕日きれいやな」って言ったら、
「最高だね」って言ってくれた。









本当の気持ちを伝えるのに

勇気なんていらんくて、

本当に大切な事を言うのに

場所とかそんなんもあんま関係無いんちゃうかとか思う。


ただ二人がおれば。











(ありがとう)













エンド








アトガキ
感謝ということで、特別な感じにしたくて、我が家のゆきちくんには人生最大のプロポーズをさせました(笑)。4万打にしてはショボイ小説になってしまいましたが、感謝の気持ちを込めました。