(まい様リク)









今日は崇彰がオフで、せっかく家に遊びに行ったのに、崇彰はというとゲームをぴこぴこ。




久々のオフだし、崇彰の好きなことをして欲しい。


だけど、私だってここにいるんだよ?







「たかくーん。楽し?」



「うーん。」





見向きもしないんだから。

うつぶせ寝で相変わらず真剣な眼差しを向けるのは小さな液晶。




好きなこと、普段できないぶん今日みたいなオフの日にやっておかないとって思うのかな。


だけどさぁ、好きなことの中に私は入らないの?





なーんて言ったら、面倒臭い女だって思われちゃうのかな。





崇彰の分厚い様で薄い腰を人差し指の先でつつく。






「…ひーま……」





崇彰に聞こえないくらいの声で呟く。



腰をつんつんとつつく手を止めて、背中へと伸ばす。



人差し指の先で背中に書く文字。



と・み・ー っと。




あだ名を辿って書くけど、相変わらず崇彰は無反応。





なんだかムカついてきたなあ。





ば・か


あ・ほ



は・げ





次々と指先を動かして書いてみる。


すると、崇彰の肩がくつくつと震えていた。




「ふっ…はげてないし…」




吹き出す笑い声が聞こえた。


なんだ、何書いてるか、分かってるんじゃん。





だったら…



そう思い、再び指先を崇彰の背中に滑らせる。







す・き







ぴくり、崇彰は止まる。


後ろから見える耳が少しずつ赤に染まっていく。





男に言うのもなんだけど、可愛い、とそう思った。
だけど未だにこちらを向いてくれないのが気に入らない。




その後も、「たかあき」だとか、「いろじろ」だとか色々書いてみた。





「空、」




あ、やっとこっち向いた。





「ちょっとそこの漫画取ってもらっていい?」




「……。」






やっとゲームが終わったのかと思えば、今度は漫画ですか。






「もー…ハイ、どーぞ。」





少し拗ねた態度を見せつつ言われた漫画を手渡す。

崇彰だって、私が拗ねてることに気付いてる筈なのに。




もうこうなったら邪魔してやる。




崇彰の隣に寝そべり顔を覗き込む。

細いように見えてわりと太い腕をつつく。





「崇彰ー、面白いの?」




「うーん。」





顔を背ける崇彰。一瞬見えた横顔はにやけていて、耳は赤いまま。

どうやら私が拗ねることが嬉しいらしい。




意地悪するならするでそれらしくすれば良いのに、こうしてだらしなく頬を緩ますあたりが崇彰らしいっちゃそうかもしれない。






「ねぇ、崇彰ー。ひーまー。」





ぐいぐいと腕を引っ張って見れば、小さくうなり声で返事をしてきた。





「もうちょい待って…」





そんな生返事に私も「もー」って言いながら、今の状況が楽しくなってきていたりする。






「知らない。帰ろうかなー?」





そんなことを言って体を起こしてみる。
止めてくれるの知ってるもん。






「えっ?ちょ、まっ…」





崇彰は焦った様子で漫画を伏せて私と同じ様に体を起こす。


ふんとわざとらしく顔を背ける私にあせあせとしつつも何も言わない彼。
揶揄してる訳じゃないけど、ヘタレっぽい彼の仕草がなんとも言えなく愛おしい。



私こそ意地悪してるくせに頬が緩みそう。
唇を尖らせて必死に堪える。






立ち上がろうと体を前のめりにした瞬間、がくんと体が後ろに引かれた。






崇彰が私の腰を抱いて引き寄せたのだ。



気づけば私は崇彰の両膝の間に収められていた。






驚いて固まったままの私。
片口に感じる崇彰の顎。






「ごめん、ね?」






囁くように、だけど困った様子で詫びてくる崇彰。

どきどきと胸が高鳴り私の頬も熱くなる。






「ゆるさなーい。」





「顔、笑ってるじゃん。」







私がふざけて言ったのに対して、崇彰は少しだけ笑って私の熱くなった頬を人差し指で二度つつく。








「笑ってないもーん。」





私もそう言いながら笑う。
言葉と表情が矛盾しているのは照れ隠し。






「じゃあ笑ってよ。」






崇彰はそう言うと私をぎゅうっと抱きしめた。






私は彼の腕の心地良い力強さに、「ふへへ」なんていう気の抜けた笑い声を漏らした。




「ははっ、笑ってる笑ってる。」





崇彰は満足そうに笑ってきた。


お腹で組まれた崇彰の大きな手に私も手を重ねてみる。






「まだ怒ってる?」





心配そうに問いかける彼。

私の顔をのぞき込むように見てくるから、崇彰と私の顔の距離が近づく。






「…崇彰私のこと全然相手してくれないんだもん。」





「え、あ…ごめん。」





ワガママだって、ガキだって分かってるけど、私だってオフにしか会えないんだもん。
たまには甘えてもいいでしょ?


そんなことを思いながら横に顔を向け崇彰を見る。



しゅんとしているのかと思えば、顔をまた赤に染めて驚いた顔をしている。






「可愛いね、空。」





ぽかんとアホみたいな顔をして崇彰がそう言った。
嬉しいのだけど、もっとキメて言えないものか。






「もう!そんなこと言ったって許してあげないんだからっ」





「すっごい嬉しいって顔に書いてあるよ。」





崇彰の言葉に図星。だけど態度はそのままにしておく。嬉しい気持ちに変わりはないから。






「どうしたら許してくれる?」




「うーん、チューとか?」





ちょっとふざけてみた。







「……。」



「あはは、冗談…っん!?」






崇彰が黙るから、笑って誤魔化そうと口を開いたら、お腹で組まれていた崇彰の手が私の顎に伸びて顔の向きを強制的に変えた。





そして柔らかく閉じられた唇。




唇と唇が重なる僅かな瞬間、きっと1秒とかそこらへん。
時間が止まったような気がした。





あまり積極的じゃない彼からの、珍しく不意打ちなキス。





熱くなる顔。二度と冷めないような気さえしてくる。


だけど同じくらい崇彰も赤くなっていて。









「空のためなら何でもする。」









恥ずかしそうに目をそらす崇彰はへらりと力無く微笑んだ。


















恥ずかしそうに、
照れて、
嬉しそうに、
はにかんで、
ヘタレっぽいくせに、
そんな仕草がどうしてこんなに愛おしいのか。
そんな君はどうしてこんなに格好いいのか。









その全てが君で

そんな君が

大好きだからなのか。



















"See here!"




本当は「私だけを」って言いたい。




















エンド













アトガキ
まい様、素敵なリクエストをありがとうございました!富松さんとのことで、柔らかくしたいなと思ったのですがいつのまにかデレなヘタレになってしまいました。いちゃいちゃ足りているでしょうか。イメージと違っていましたら申し訳ありません。最後まで読んで頂きありがとうございました(^^)