(成美様リク)






電話を切るときの
君の声とかで感じる

愛の重み










そんな素振りが見えないから余計に、探ってしまうのだと思う。

俺は基本的に興味が無いとどうでも良くて、その代わり一度良いと思うともう真っ直ぐになる性格だ。と、自分で思う。


だからその分、興味が湧くことに関しては、周りを気にすることなく集中的になるんだと思う。


多分、「マイペース」と言われる人の大概がそれに当たる。



で、何が言いたいのかというと、空に関しては全てが知りたくて、空の為に何かしたいと思うということ。




遠距離恋愛、なんて、簡単だと思っていた。
もう良い大人だし、どうにもならないことはどうにもならないと理解出来ているつもりでいた。



だけど誰かから聞いた、「大切なのは一緒の空間に居ること」なんていう言葉が妙に奥歯に挟まる。






週1だった電話も2日に1回に増えた。



俺が日に日に感じるのは、寂しい分だけの好きってこと。会いたいと思えば思うほど、好きなんだなぁって実感する。
俺じゃないみたいだけど。




空もそうだといい。
だけど分からない。
それはやっぱり一緒の空間に居ないからだろうか。顔が見れなくて、態度が知れないからだろうか。

こうして知らない間に空の気持ちも離れていくのかな。


元々寂しがり屋ではある空だから。





天井を眺めながらぐるぐると考え事をしていると、それを遮るように携帯が規則的な機械音を鳴らした。




「もしもし。」


『空でーす』


「はは、分かってる分かってる。」



他愛ない会話をこうして紡いでいく度に、素直に話せないオレも居た。

声色を探って、いつもより違わないかを確認して、もう俺、必死じゃん。



『そろそろ良い時間だねぇ。慶彦、明日も試合でしょ?』


「あー、うん。じゃ、おやすみ。」


『…明日頑張ってね!』


「えー、がんばるー、」


『あはは!嫌そうな言い方しないの!』

「空居ないと頑張れないかなー。」


『…そんなこと、言わないで?』


頭撫でて、ぎゅって抱きしめてあげられたらな。



「ん、ごめんごめん。頑張ります。」

『じゃー、おやすみ!』


「おやすみ。」




会いたいと一言言ってくれたら、会いに行くのに。気を遣う空はきっと、俺に言わずに胸の中で一人で言っているんだろう。



せつねー。




明日、会いに行こう。
空の喜ぶ顔を見に行こう。









試合後、車で空の元へと向かう。


あー、着くの夜遅くなるな。






空の家の前に着いて、電話をかける。



『っ、も、しもし?』



昨日したから今日電話すると思わなかったのかな。
焦ってる。



「慶彦ですよー」


『あは、分かってますよー』


「俺ね、今日約束通り頑張ったよ。」


『あ、テレビで見たよ!やばかった、』


「かっこよかった?」


『ちょっとね。』


ちょっとかよ、と思って笑ってしまう。

車の鍵をカチャカチャと指で鳴らしながら喋る。



「空ー」


『うん?』



「顔、見たい。」



『…え?』



「会いたいよ。」




『そ、んなこと…言わないで』



「なんで?」




分かってるけど、空の口から聞かせて。

俺が素直に言えば、空だって素直になれるでしょ?





『っ…私だって、会いたいもんっ』





泣いてるのかな。
俺はその言葉を聞くと直ぐに車から出た。




「そっか。じゃあさ、今すぐ会おうか。」



『できないでしょ…?こんな時間だよ?』



「俺ねー、昔っから、何でかやれば何でも出来ちゃうんだよ。」



『やらないだけで?』



「うん、そうそう。だから、俺にできないこと、無いと思う。」



『あはは、なんで自信満々に聞こえないんだろう。』



だってそれは自信じゃない。
出来ることがすごいとは思わないし。




「空も会いたい?」



『うん…そりゃあ…』



「じゃあ、外出てみてごらん?俺も出てるから。今日、星めっちゃ綺麗なんだよ。」


『え、見たい見たい。』




ガチャンと、ドアが開いた。


小さなアパートの一階に住む空は、外の駐車場に出るなり空を見上げた。



携帯を耳にあてるのを止めて、小さく息を吸い込んでいつもより声を張る。

口の横に手をあてる。




「空!」



呼べば、まだ受話器を耳にあてたままの空はきょろきょろと辺りを見渡す。



「うしろ。」



俺はもう一度、携帯を耳にあてそう教えてやりながら、近付く。



ばっと振り返る空は目をまん丸にして驚く。




「ね。何でも出来る。」



俺がそう言ってやれば、「なんで」って言う空の瞳が赤いのが分かった。

そしてまた潤んできている。





だから、頭撫でて、ぎゅって抱きしめてあげた。
ずっとしたかった。




「空が寂しがるから、来ちゃったよ。」



「来てるなら、言ってよバカっ」


「いや今来たんだけど」


「そうゆうロマンチックなの似合わないっ!」


「しつれー。」



喚くような彼女を優しく抱きしめたままそんな話をする。
てゆうか、ロマンチックではないだろうよ。




「空、」




名を読んで、空の頬に手を添える。
こんなに寒いのに、空の頬は熱い。






見上げる空にゆっくり口付ける。









「愛してる。」









大切すぎる、そう思っていたら口を突いて出てきた言葉は、それこそ俺には似合いそうもないようなクサい言葉だった。







毎日、空と一緒に過ごせたら
そりゃもう幸せかもしれないけど
それで空の大切さを忘れてしまうのなら
この距離も必要だと思える。

久しぶりに会ったときに
こんな風に、こんなに苦しくなるくらい幸せなら、

この距離も愛しいと思える。







「慶彦っ、もう一回……っ」






泣き笑いの空が美しすぎたから、強請る彼女に少し苦しいくらいの大人なキスをした。












星空の下で
(繋がってるから)














エンド







アトガキ
成美様、すてきなリクエストをありがとうございました!遠恋とのことで少し切なさも入ってしまいましたが、甘くなっていれば良いのですが。イメージと違っていましたら申し訳ありません!長くなりましたが最後まで読んで下さりありがとうございました!