(琉架様リク)





私は女の子です。




ガールズ デイ




下腹を片手で押さえ俯く。
痛いとゆうか、重い。いや、苦しい。いややはり痛い。気持ち悪い。



おかしいな、薬飲んだのに。



あまりの痛みに動きを止める。



もう少しで仕事も終わるし、頑張れ私。と、自分の身体、精神に鞭打って氷嚢の準備をする。


当たり前だが氷嚢は冷たく、背中がぞわりとする。そして指先が冷え腹の痛みも悪化した気分になる。

病は気から、って本当。




「はああ、終わった終わったー!」



清々しい。腹立つ程に清々しい。
そんな彼氏、雄介のご機嫌な大声を聞いて、みんなに合わせて私も笑ってみたけど、正直うまく笑えない。



すたすたと立ち去ろうとする雄介の腕を掴む。



「待って、ちゃんとアイシングして帰ってください!」



「え?愛してる?もー、ばかだなぁ俺もだよ!」



「………。どうやったらそんな聞き間違いするんですか。てゆーか今私がそんなこと言うと思いましたかバカヤロウ」



あぁお願いだからこのテンションやめてくんないかなぁ。

愛してますけどね!


早口で言い返すと、「ハハハ」と愉快に笑ってきた。
因みに周りに居る人も楽しそうに笑っている。
こうして場の空気を楽しませるのが上手な雄介。実は尊敬している。畜生。


氷嚢を渡すと、「サンキュー」と言って受け取る。



あー、お腹痛い。

無意識に下腹をさする。



「ん?空腹痛い?」



ゴツいくせに目敏い。
わりと小さいことに気が付く。


「あー、まぁ、ちょっとね、」


「風邪?」



「どうかな、」



ちゃんと周りには聞こえないように心配してくれるのに対して曖昧に返事をする。


生理ってなんとなく恥ずかしくて言いにくいから。




なんだかんだで仕事もだいたい終わって、環境も静かになってきた所で、今までないくらいの痛みに見まわれた。


あぁやばいな、と思っていると、もう着替え終わった雄介の姿が見えた。



「空、仕事終わった?一緒に帰んね?」



「あぁうん、もうちょっと待ってて。すぐおわる……か、ら…」



そう説明しているところで頭をくしゃりと押さえられた。



「まじで大丈夫?」

「んんー…」



ほんとに痛い。くそ、この目の前の男には二度と解るまい。この痛み。

とか悪態を尽きつつも、いつもの悪ガキみたいな顔とは違って、珍しく眉を下げ心配そうな表情にキュンとくる。




「腹?なんか変なもん食った?トイレ行ったか?」



デリカシーがないというか…
まあ雄介って感じだけど。



「いや、そうゆうんじゃ無いかんじ…」



私が言葉を濁しながら言う。雄介も馬鹿じゃないし、分かってくれると思う。



「えっ!?病気!?」



馬鹿なのかな。


いや、分からないものか。うん、そう簡単に分かるものじゃないよね。



女の子の週によって不安定になっている私の情緒は、一生懸命に寛大な心であろうと踏みとどまる。



「いや、ちがくて…って、わああっ!」



酷くなる痛みに腰を曲げながら説明しようとすると、突如、浮遊感が身体を襲う。


いつもより高くなる目線と、私の身体を掴む逞しい腕が、姫抱きに抱っこされたんだということを知らせた。



「ちょっ、ゆゆ雄介!こわいって、こわいこわい!」



首にしがみつきながらも叫ぶ私をよそに、雄介はずかすがと歩みを進める。



「じっとしてろって、暖かいとこ行くぞ。」



「そ、そんな、大丈夫だって!」



「なんかあったらどうすんだ。」



きゅっと腕に力を込められて、口を噤んだ。
恥を忍んで言うしかないか。



「〜っ、だから、あの、……ただの、生理痛だから…」



首にしがみつきながら、小声で呟けば、はた、と足を止めた雄介。


「あー、なるほど!」


その頃にはもう既に体育館から少し離れた暖かい個室の目の前だった。







部屋の中で、楽な大勢を探したところ、色々動いてみて、土下座のような格好になった私。


「そんなに痛いんだ?」


「うん…まぁ個人差あるらしいけど。はー男になりたい。」


私のそんな心からの呟きに、雄介は小さく笑うと、腰をを撫でてくれた。



「ヨシヨシ、」



うずくまる私の横で正座する雄介は腰を撫でてくれながらふざけているのかこんな事を言い始めた。



「痛いの痛いの飛んでいけーっ」




きやすめ。


そんな事を心の中で呟くも、あぁなんだか善くなってきたかもって思ってきた。




「こんな時に空の痛みも分かんねーし、何したら良いのかも分かんねーし、情けねぇよなぁ。」



いつでも自信満々な筈の雄介が少しだけ弱々しく放った言葉。


大丈夫。雄介は男なんだし、分かんなくて当然なんだし。しょうがないのよこれは。


そんな風に思ったことは嘘じゃないけど、こんな言い方したくなくて。



「そばで、そうやってしてくれるだけで、十分楽になれるよ。」



そうやって返せば、うーんと唸る雄介。どうやら納得していない様子。



「出来るもんなら変わってやりたい。」



尚も腰を撫で続けている暖かくて大きな手の主は、そう呟いた。



思うんだよね。
雨に打たれている捨てられた猫が居たとして、雄介なら迷わずその猫を懐に入れて持って帰るのだろうなって。
その猫がもし「こんな飼い主イヤだーっ、元の飼い主のところへ返してよーっ」って言ってきたとしても。
強引に、自分の正しいと思うことをするのだろうな。



「根本が優しい。」



呟いた私の言葉は多分届かなかった。



「雄介、ちょっとよくなってきたかも。ありがとう、」



私が体を起こしてそう言うと、ほっと安心したような表情を浮かべた雄介。


ほらね、やっぱり、根の奥底は優しさで満ちている。



「じゃあ今のうちに帰ろっか。」



「ん、帰ろ。」



「抱っこしようか?」



「いやいや大丈夫です。」



「わはは、残念!」






調子に乗るんじゃありません。とか思いつつ、周りを巻き込むこの明るさに私も照らされたのでした。














エンド






アトガキ
かなり不安いっぱいのものが出来てしまいまして申し訳ないです。あれです、野放しにすると好き勝手してしまうようです私。お許し下さった琉架様、ありがとうございました!イメージと違っていましたら申し訳ありません。最後まで読んで頂き感謝です。