(雄麻様リク)
そうそれは、少し前の話。
私にはとても大好きな人が居て、長い間好きで、だけど一方通行で。
私は一生懸命アピールして、なんだか仲良くもなれてきて、いけるっ、そう思い意を決して告白した。
その時好きな人に言われた言葉が
「背、そっちの方が高いし、隣歩くの恥ずかしいってゆうか…」
まぁ、…一気に冷めたよね。
なにそれって。
確かに私は背が高い。彼より背が高かったけど…
兎に角、傷付いた。
もともとこの身長はコンプレックスだった。
だけどこんなに酷くコンプレックスとなったのはこれがきっかけ。
「ふられたの、まだ気にしてんの?」
溜め息混じりのこの幼なじみは、勝手に私の家に出入りする程の関係だったりする。
「何よ、文句でもあるの?」
皮肉を含んだ表情で目を細めて大輔を見ると、低い声で「んー」と唸っていた。
明らかに文句ありそうじゃん。
「だってさ、内面とか体重とかなら努力でどうにでもなるけど…身長なんて…ど、どうにもな……」
「わああもう、泣くなよ?」
自分で言いながら切なくなって、鼻の奥がつんとして声が震えた。
そのせいで大輔が焦って言ってきた。
「だいたいさぁ、身長どーのこーの言う奴にひっかかる空の見る目が…」
「はい?なんて言った?」
「なんでもごぜーません。」
小声で小言を呟く大輔に強気を張って問えば、目線を斜め下へとそらして口角を上げてわざとらしい言葉で返された。
「てかさ、大輔はどう思う?自分より背の高い女の子と、付き合える?」
私は四つん這いで這って進んで大輔に聞く。
大輔は私から顔を背けて「えー?」と言いながら考えている様子。
「まず俺より背高い女の子に出会ったことねぇからなぁ。…でも」
それもそうだね。大輔は背が高いから。
大輔の隣なら、身長も気にならないかなぁ。
「別に、俺は気にしないし、本当に好きなら身長なんて気にしないでしょ。」
本当に好きなら、か。
私、何か間違ってたのかな。
そんな気がして、自分が後ろめたくなってきた。
「けど、空が気にしてしまうって言うなら、それは俺は空の好きだった人が、悪いけど許せない。」
真面目な彼らしい言葉に少しドキッとしてしまった。
「俺なら、そんな思いさせない。」
眉を力強く寄せてそんなことを言う大輔の表情はやけに大人びていて、あの眩しい笑顔の裏側を見ている気になった。
「…たぶん」
「たぶんって」
その後、少しぴりっと張った空気を崩したかったように冗談ぽく笑った大輔。
私は小さく吹き出して笑ってついついつっこんだ。
きっと大輔は本当に、私が前に好きだった人に対して良い思いをしていないのだという事に気付いた。
私のためにだなんて思っちゃいないけど、なんだか嬉しい。
「たまたま空が好きな奴が最低だっただけで、他の人なら普通は大丈夫だよ。」
眩しい笑顔。
バレー界のプリンスって感じ。
「…なにそれ、励ましてくれてるの?」
「一応?」
疑問系かよ。
まあありがたく受け取ろうか。
苦笑を二人揃ってしていると、ふいに大輔は片手を私の頭にぽんと乗せてきた。
「俺は空くらいの身長がちょうど良いけど。」
にっこり眩しい笑顔のままで、私の頭に大輔は手を乗せて、押すようにしながら撫でてきた。
ひどいこと、するよね。
こんな弱ってる時に、こんな強い笑顔で、こんなこと言われて、どうにもならない訳ないじゃん。
「あれ?なんか顔赤くない?」
「あああかくないっ」
こうゆうこと、平気で聞いてくるのが大輔らしい。
そして本気で分からずに心配してくるのも。
だけど、昔から支えてくれた大輔がこうして私の身長を好きだと言ってくれたなら
私、この身長でも
いいかもしれない。
「空?」
「…ありがと。」
「あぁ、…おう。」
礼を言い合う様な仲じゃないもので、2人とも不自然に照れてしまう。
「うん、だからさ、空。」
大輔は、はっとした後でジッと顔を見つめてきながらそう呼びかけてきた。
混乱しつつも「ん?」と私は首を傾がせた。
「俺じゃだめ?」
「何が?」
「空の、隣歩くの。」
「……!?」
だってだって女の子
こんなこと言われて、平気なわけないでしょ!
エンド
アトガキ
雄麻様、とても素敵なリクエストをありがとうございました!悩んだ結果八子さんにしてしまいまして、甘くなっているのかどうなのかくすぐったい感じになってしまいすいません。イメージと違っていましたら申し訳ありません。最後まで読んで頂きありがとうございました!