(刹那様リク)








あんまりイメージ無いかもしれないけれど、割と気持ちは強い方だ。態度に出さないだけで。




感じるより先に







飲みは元々あまり好きじゃない。
更にあんな危ない野郎共の中に、空を連れて行くなんて怖すぎる。


けど、空が行きたいって言うからしょうがなく。

俺がわいわいしてるのに、空は一人っきりで飯を食べているっていうのも何だか悲しいし、 だからと言ってこっちの人間関係も大切だったりするから。




今日はバレー関係の人間一部で開かれた飲み会。


広めの座敷にみんなで座って案の定わいわいやっている。
俺も周りもそこそこ酒が回ってきている。
なんて、客観的に思える辺りで俺は止めておかなきゃ。



正面に座る石島の話しを聞いて笑っている俺の横に座る空。
ちらりと横目で見ると顔を赤に染めて、彼女は彼女で隣に座るある人と喋っている。



監視なんてそんなつもり無いし、空のことは良く知ってるつもりではあるから、別に男と話したって構わない。


空が嫌な思いしないなら、別に全然気にならない。



だけど、そうは言ってもちょっと気になる。
空の隣に座るあいつの存在。


あいつはなぁ。
本人はそんな気はないけど、細かな気遣いが出来たり、男としての優しさを持っていたり、喋りが上手かったり、更には顔まで良いし、上げればきりがないくらい人として出来たやつだからな。


もう存在がモテると思うんだよな。



ちょっと心配というか。
不安とかじゃなくて、俺がただ弱気というか。



「ヨネさんて家でどんなんですか?」


「裕太?家も外も変わらないよ〜?」

「嘘やん、甘えたさんとかになったりせぇへんの?」




ならねーよバカどんな印象だよ。


まぁそんな奴、福澤は頭も良いから人の女をとるようなマネも考えにもならないと思うから大丈夫か。

しかも、福澤もあんまり飲まないしな。さすがさすが。



正面のこのバカみたいに面白い奴よりは良かったかな。




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「裕太さん、めっちゃ笑う」



石島のそんな言葉にもふっと笑ってしまう。



「石島がおもしろすぎんだろ。」



笑いながら返し、しばらく放っておいた空に目を向ける。



うわ、結構酔ってんじゃん。




「空ー、大丈夫?」



小声で問いかけると、小さく微笑んで頷いた。



「あんま飲み過ぎんなよ?」



顔を覗き込んで言ってやれば「はあい」なんて分かっているのかいないのか。



それから少々注意しつつも普通に飲食をしていた。




そしてそろそろ帰る雰囲気が漂う中で、空は店員さんが持って行き易いようにコップを一カ所にまとめていた。
先程まで一緒に話したり話していなかったりするお隣の福澤と一緒に。




ガシャンという音と共に鮮やかな色の酒が零れ、コップが割れた。


空が手を滑らせたようだった。



「うわわ、ごめんなさいっ」


「ちょっと大丈夫?ケガない?」


俺は珍しいなと思いつつ苦笑いを浮かべながら布巾を手に取り問いかける。



「服、びちゃびちゃやん、」



福澤は焦って床や机を拭いてくれている。


空が「うーん」と唸りながら指先を見つめているのが気になる。
破片で切ったかな?



と、もうひとつ気になる。



焦って床を拭く福澤が空の濡れた服を拭こうと手に掛けた。


その瞬間、ピシリ、と俺の頭の中の何かが音を立てた。




気づけば、空の服に手を掛けた福澤の腕を掴んでいた。





「福澤、大丈夫だから。」




俺は上手く笑えなかったのだろう。
福澤はやっちゃったなと言うような少し気まずい表情を浮かべてその後愛想の良い笑顔に変わった。




「ヨネさん、布巾足りませんよね?俺とってきます。」




「おう、悪い。サンキュ」




そう返して、空の濡れた服、スカートを拭いてやる。



空が黙ってるからどうしたのかと思って顔を見ると、ぼーっとして俺を見ていた。



「な、なんですか。」



俺が聞くと、はっとした空は驚いたままの表情で口を動かす。




「裕太、かっこいい…」



なにが。
と思ったけど聞かないでおいた。



「喋んのは構わないけど、触られんのは、ごめんけど我慢できないから覚えといて。」




目を見ながら俺の我が儘とも言えるような説教を少しすると「はいっ」と何やらすごく嬉しそうに返事をしてきた。
聞いてんのかなこの子。




「あ、そういえば、ケガしてない?」



「ちょっと指先切っちゃったけど大丈夫。」



「見せてみ?」



あぁ、本当にちょっと切ってる。


……、切ってる。

…うん、






「不注意のお仕置き。」



俺は少し笑いながら言って、空の指先を控え目にくわえて、少し強めに吸ってやった。
口の中に微かに感じる血の味。


もちろん、周りに人も居るし丁度手元にメニューがあったからそれで隠してやったんだけど。


「いっ、」



と痛そうに顔をしかめる空に「ごめんなさいは?」と促したら、



「ごめんなさい…」



って顔を真っ赤にさせながら言ったから頭を撫でてやる。



そして福澤が持ってきてくれた布巾で、ある程度拭き取った。





帰り際、石島がうっるさいうるさい。



「ヨネさんまじ俺見ちゃったんすけど、なにやったんすかメニュー裏でっ!」



「別になんもしてねぇって」



興奮気味の石島に笑って言うと、「ええーっ」とか叫ぶ。おい誰かコイツどっかに連れて行ってくれ。



そんなこんなしていると、コソッと福澤が来た。



「すいませんでした。」



謝る割には顔がニヤついているぞ。



「いやいやこちらこそ、大人気なくて。」



すいません、と謝ると福澤はへらへらと笑いながら肩がくっつくくらいに横に立って小さい声で言ってくる。



「ええですね、彼女さん。めっちゃ想われてるやないですかぁ」



こいつは。
悪徳なキャッチセールスする商人みたいな喋り方だな。

「じゃ、失礼します」とご丁寧に言って去っていった。






「空、帰るよー。って何をやって…」



石島ときゃあきゃあ騒ぎながら喋っている。
あぁあれだなきっと。石島にさっき俺が聞かれたことを空も聞かれて、空は喋ったんだな。




「あ、裕太ー。帰ろ帰ろ!」


「はい、帰ろ。」


「スカートべたべたになっちゃったよ」



「飲み過ぎんなって言ったろ?」



笑いながらそう言うと、空は苦い笑みを浮かべた。



「これもう捨てないとだめかな?」


「うん?見せて。」



身をかがめてスカートの裾を指で摘む。




「こら裕太さん。こんな場所でスカート捲り?」



「ちげーよもう、はやく酔い醒めてよ。」



空は何を照れてるんだ何を。



「なに考えてんの。」



呆れながら頭をこつんと小さく叩くと、驚いたのかぴくりと肩を震わせた空。



「空やらしー。」



耳に口を寄せて言ってやった。
にこにこと笑って。


空がその気なら全然いいんだよ俺は。このままどっかに泊まっても。





「な…何をおっしゃいますか。」



「お?正気になった?」






真っ赤になる空の頬をつついて笑った後、その手で空の手を握って引く。










他の誰にも触られんなよ。





なんて、甘い言葉は言いたくないから。












エンド






アトガキ
刹那様、素敵なリクエストをありがとうございました!お酒ネタ多いですが今回も頼りました。友情出演で予定通り福澤さん、それから石島さんも勝手に出てきてもらいました。少しエロさをとのことだったので最後に無理やりぶち込むという暴挙に出ました。挙げ句遅くなって申し訳ありませんでした。長くなりましたが最後まで読んで頂きありがとうございました!