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「や…、み、瑞貴…!」
「声、出したらだめだよ。聞こえちゃうから」

そんな、という反論は彼の咥内に食べられてしまう。かわりに与えられたのは、熱い瑞貴の舌。隙間から入り込んできて、一気に私の中を絡め取る。

「っ……は、」

しっかりと閉められた扉の下から、廊下の灯りが漏れて入ってくる。そらさんと海司の笑う声が一緒になって、部屋の中に響いた。


再び一緒に暮らすようになって数日。みんなで帰国祝いをしてくれることになった。昔からの桂木班いきつけの居酒屋で大騒ぎして、そろそろお開きって頃に、ようやく仕事を終えた黒澤さんが合流して。

「おい、もう終わりだぞ」
「タイミング悪いな黒澤」
「えー!ひどいな広末さん、俺もせっかくエミさんとご一緒できるって、マッハで仕事終わらせてきたのに〜」
「…マッハって時間かよ」
「文句なら石神さんに言ってくださいよ」
「お前それ、わざと仕事振られたんじゃないか?だってスパイっしょ?」

そんなこと、あるかもしれませんね…と神妙になった黒澤さんがその場を笑わせて、じゃあ二次会行こうぜっていう流れになるのは当然だった。

(明日早いんだよね…でも私のためにみんな集まってくれてるのに、先に帰るのも悪いし…ああ、そうだ。明日必要なもの、まだ段ボールの中かも…)

「エミ?無理しないで、僕らは帰らせてもらう?」

はっと気づくと、少し気遣うように笑う瑞貴の顔が目の前にあった。

「大丈夫。久々に呑んだからぼーっとしちゃった」
「…そう?まあこの流れじゃ放してもらえそうにないけど…」
「あはは…」

みんなに聞こえないように話をしていると、瑞貴の肩越しに、そらさんが顔を出した。

「なあなあ。二次会、2人の家でしたらダメ?」





「んっ……うう、…あ、だ、だめ…!」

シャツの裾から滑り込んできた手のひらは、アルコールで火照ったからだと同じくらい熱い。瑞貴も酔っているのか、それとも……。

「声我慢してるエミも、いいね」

興奮させられるな、って耳元に吐息と混じった声が落とされた。ぞくりと耳から背中に電気が走ったみたいになるほどセクシーな声。身体の中心から熱いものが溢れてきそうになって、たまらず太ももを拠り合わせた。

「…どうしたの?早く触ってほしい?」
「ち、ちが…!」

しーっと、声を押さえるように促された。

結局酔っ払いの桂木班のみんなを説得することなんてできなくて、二次会会場はこの部屋の向こう。廊下を挟んで隣のリビングになった。

「は…う、み、瑞貴……あっ」

シャツをたくし上げられて、ずらされた下着から解放された胸に瑞貴が顔をうずめる。さっきまでキスを交わしていた濡れた唇で、舌で、胸の先の蕾を転がす瑞貴。彼の両手で寄せられた胸を交互に愛撫されて、甘い痺れは足の先まで駆け抜けた。

「!」

甘さに引きずり込まれてそのままこの行為に没頭しそうになる私を引き留めるように、みんなの笑い声が聞こえてきた。

「…楽しそうに盛り上がってるね。まさかここで僕らがこんなことしてるなんて、思ってないだろうけど……」

でも、あんまり籠ってると、あやしまれちゃうかもね、なんてゆるく笑う瑞貴の瞳は妖艶で。

「は、…ああっ……や、だめ、だめ…!」

タイトスカートのすそはウエストに集められていて、あらわになったショーツの隙間から肌に触れる瑞貴の指。数回表面をなぞってから、それはすぐにナカへと入り込んできた。

くちゅ……。

声を潜めた行為のせいで、いつもより鮮明に音が飛び込んでくる気がする。

「ぐしょぐしょ。こういう背徳感のあるのが、エミは好きなんだ?」
「ち、ちが…んっ」

出し入れされる度に、彼のゆびと一緒にまとわりついた水音が弾けていく。

「あ!」

くりゅっと、小さなしこりを見つけ出された。たまらず声が上がる。

「あ、だめ、だめ…!瑞貴…っ!」

ぐりぐりと、優しく、でも執拗に外から押しつぶしながらこね回され、内側からも同じ場所を突きかき混ぜられる。
痺れはもう、下半身どころか全身を駆け巡っていて、狂気のような快感を抑え込むのも限界と思われた。与えられままに声を出したい。喘ぎたい、快感をこのまま飲みこんでおくなんて無理だ。どこかに解放しないと、おかしくなりそう。もうどうにでもなれ、と理性を手放しそうになる度に、ドアの上下の隙間からの灯りが私を呼びもどす。幾度もそれを繰り返し、手元に掴んだシーツで口元を追おう私に、挑戦状のような一言。

「…イキたい…?」

ぺろっと、胸の先端をもう一度舐め上げてから、瑞貴はちゅ、と小さなリップ音をたてるキスを落とした。

はあ、はあ、とあがる息しか返せない私に、満足そうに微笑む。

「お、おねが……。挿れ……」

絶え絶えの息の間に、やっとのことで私が口にしたのは素直な欲求。

「ふふ、よく言えたね。……でも、声、出しちゃだめだよ。エミのえっちな声なんて、あの人たちに絶対聞かせたくない」

だったらなんで、こんな状況でこんなことするの、なんて矛盾を問いただす理性的な自分が一瞬だけ脳を横切ったけれど。

手際よく腹這いにさせられた私の胸を鷲掴んだ瑞貴はすぐに後ろからかたい瑞貴自身を差し込んできた。

「んっ……あ、!」
「…我慢して?」

背中から覆いかぶさった瑞貴は私の耳たぶを甘噛みしながらせつなく呟く。その声色がまた、私の中心を甘くときめかせるのだ。

「んっ、んっ……!」

押さえようとしても、瑞貴の身体の動きに合わせて零れてしまう声。どうしようもない。

(……あ、もう……声、出ちゃ……)

身体を揺さぶられながら、ふと目に入ったのは、私の顔の横に置かれた瑞貴の左手。
私は彼の長い指に口元を寄せ、そっとその指先を舐めた。気づいた瑞貴は応えるように私の咥内に指を這わす。

「ふ、……むっ……は」

瑞貴自身を吸い上げるときと同じように、私は大切にそのきれいな指を扱った。

「…やら、……し」

瑞貴の艶っぽい呟きと、突き上げが強くなったのはほぼ同時。目の前が白くかすみかけたのも、そのすぐ後だった。

「わっはっは!洒落になんないっしょ!それ!」
「でもしばらく出てきませんよ?」
「まさか!さすが瑞貴でも、この状況でそんなこと…」
「まあ、俺らにそういう妄想されるってだけで嫌がりそうだもんな、あいつ」

「!!!!」
「!!!!!!!」

ピタリと動きが止まる。

「………あの」
「ゲームオーバーだね」

はああああ、と長いため息は二人同時にこぼれた。ほっとした安堵感が半分、昇りつめられなかった欲求不満からのがっかり感が半分……。

(いやいやいや、欲求不満て!)

「続きは、お開き後、ね?」
「………うん」
「次はたくさん声聞かせてもらうから、我慢しなくていいよ?」
「み、瑞貴!」
「…でも、一生懸命我慢してるエミのこと攻めるのも、けっこう気に入ったかも……」
「もう!」

そんな会話を交わしながら急いで乱れた服を直す。先に部屋を出た瑞貴が、みんなから冷やかされている会話が聞こえた。

「なにやってたんだよ、あやしーな」
「怪しい?なんのことですか?」
「二人が消えたから、まさか夫婦の愛確かめちゃってんじゃないのって」
「僕がみなさんがいる前でそんなことするわけないじゃないですか。いつでも二人きりになれるのに」
「うっわ、なんかすげーむかつくんですけど!」
「……あ、あの僕もうこの手の話は…」

エミの荷物整理を手伝ってたんですよって、話がずれたところで私もようやく輪の中に戻る。

「すいません、エミさん。明日からでしたっけ?新しい劇団は」
「あ、明日は顔出しだけなんですけど…提出する書類をどの段ボールにしまったかわからなくなっちゃって。あはは……」
「見つかったのかよ」
「おかげさまで」

まだ捜索なんてしていない書類の話をしたところで、隣に座っていた黒澤さんが顎に手をかけながらにやりと一言。

「……ピアス、こっち側はずれかかってますよ?」
「!!」
「目ざとくってすいません〜」

真壁さんが、私よりも赤く頬を染めるのが目に入った。



秘密
(憶測ですよ、なんて彼は涼しい顔を返した)


 


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