あ、……感じて、くれてるんだ……。
さっきからずっと押し寄せるように私の身体を支配する痺れが益々強くなった。愛おしさが溢れて全てを食べ尽くしても足りそうにない。好きとか愛してるとか、そんな言葉で足りなければどうやって表現したらいいのだろう。
この気持ちを伝えたいな、とそっと視線をあげて松田さんを覗き込んでみる。虚ろな松田さんの瞳と視線がぶつかった。
「……!」
「…………」
「エミちゃ……あか、ん、て……そない……」
「………?」
口の中のそれが硬さを増した気がする。じわり、塩味が滲み出したから、再び先端を遊ぶように舌で転がした、その時だった。
「あ、アカン…て……っエミ……」
それまでの脱力しかけた松田さんの腰が一気に引かれたのと同時に私の顔に生暖かいものが飛び跳ねる。
「え」
「あ……」
「…………」
「うわああああああ!」
とろり、と頬を流れ落ちる生ぬるい液体が、彼のものだと気付くのに流石の私にもそう時間はいらなくて。
「うわっほんま、ほんまごめん!こんなつもりちゃうくて、ごめん、大丈夫か?気色悪いやろ?」
こんなに慌てた彼を見たのは初めてかもしれない、というほど松田さんは焦りながら私の顔をティッシュで拭いて謝り続ける。
「え、や、……いえ、あの、びっくりして……」
「ほんますまん!エミちゃんの口の中でなんて絶対あかんと思って引っこ抜いたら……もっとあかんことしてもうた……ほんま、ありえへん……うわあ…」
「え、と、大丈夫、ですよ?……えーと、こ、コラーゲンと思えば」
「あほか!そんなわけないやろ!………ほんま、ごめんな?」
そういうと松田さんはもう一度私の顔を丁寧に手のひらで拭って、それからそっと包み込むように抱きしめた。
「あかんて…あそこで、あんな顔で見られたら、理性なんてほんまぶっ飛んでしまうって……」
「え、あんな顔?」
「……なんていうか、その……めっちゃエロい顔っていうか」
「な、なんですかそれは…!」
「……自覚ないんかいな」
「……うーん?」
「……まあ、エミちゃんらしい、か、な?」
困ったように笑ってから松田さんは私を抱き上げて、それからすとん、とベッドへと下ろしてくれた。
「ほな、今度はお返しに…」
「え!ちょ、も、もういいですよ!松田さんはさっき」
「え?」
「もう、さっき……」
「ん?」
「また……!わかってるくせに」
「……罰やで」
「え?」
「……まあ俺は確かに松田やけどなあ。……こんな時くらい」
「………あ、………隆実、さん」
「うん、正解」
「……隆実さん」
「うん?」
「………隆実さん、今夜はもう、寝ましょ?」
「…………えっと……」
それまで余裕ありげニコニコと目を細めていた顔が少し赤く染まっている。言いにくそうに彼は続けた。
「……あかんわ……やっぱりその顔あかんて」
「え。……わ、わ、わ!……あ……っ」
また、はじまる。
(きっと朝まで終らない)
がんばれエミ。
ちょうがんばれ松田。
end
20110918