God father.
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私の役目は子供に紛れて、
施設内に侵入し仲間を施設に誘導する事だった。
今回は私のナイフは必要ないらしい。
せっかく0に研いでもらったのに。

施設にいる子供たちは私よりか幾分か幼くて、
潜り込めるのかと不安になる。


「13は小さいから大丈夫だよ」

3がそう言って笑った。
一緒に来たのは、3と爆弾魔の9と闘犬と呼ばれる12、
それから普段はサラリーマンをしている18だ。

事実、ワイミーズハウスには年齢の様々な子供がいた。そして大人も。

その中に知らない子供が一人紛れ込めるものなのか、と思ったが
案外簡単に施設内に侵入ができた。
クリスマス前日だったからだろう、多くの客がきていたからだ。

施設内のドアには数学だったり化学だったり、
心理学だったりの問題が取り付けられていて、
それを解かないと開かない仕組みになっていた。
どこか自分の育ったあの家に似てると、そう思う。

頭の中にある地図通りに施設内を進む。
不思議と誰にも会うことがない。
四つ目のドアは高度な犯罪心理学の問題だった。

開けて、中に入る。

そこは倉庫になっていて、隠れるのには持ってこいだ。


 電波を拾われない特殊な無線機で他のnumbersに連絡を取る。
すると、慌てたようなNo.3の声。

ーNo.13、外が警察に囲まれてる、作戦は中止になりそうだよ

ーはぁ?

ー君に渡した試験管、あれを施設のどっかに仕込んで脱出してね

ーなにを言ってるのか、全くわからない

ーホームが襲撃されたらしい。とにかく、この計画は君一人で遂行するんだ

ー…わかった

ーいい子だね。で、もうアメリカに戻ってはいけないよ。21でも14でも、そこらへんの奴に連絡を取って匿ってもらいなさい。


Bye. Be proud our great god father.


そう言ってNo.3は連絡を絶った。

作戦が漏れていたのか。

まさかホームに裏切り者がいるのか。

さて、どうしようか。
急な計画の変更はよくある。
だからこそ、ウィルスの入った試験管を持たされたのだ。

ホームは無事ではないだろう。


「偉大なる父のために、ね」


それが妄言だとはわかっていた。

この世界に生まれて
物心ついたときには血の臭いを覚えていた。
五つの時には人を殺した。

そんな私たちでも、家族愛に似た感情は持っていて、
たぶんボスを偉大なる父といって慕うのもその一つだった。

だからこそ、ホームは大切だった。
そのホームが壊された今、私がすることも一つ。

「あなたの家族も奪わないとね、L」

雪が降り始めた深夜、警報器が鳴る中を脱出した。
ライトに照らされながら、裏の林を駆けた。
そこまで鮮明に覚えている。


最後に聞こえたのは、銃声だった。






「目が覚めましたか、」

目の前にいたのは、黒髪で隈が酷いアイスクリーム屋のお兄さんだった。
いや、この人が誰か、私は知っている。

「ええ、最悪の目覚めです、L」

「気づいていましたか」

「ええ、やけに甘党の変なお兄さんだと思ってましたが」

私は何本ものチューブで生かされていた。
腕にも脚にも力が入らない。
さて、この世界ももう終わりだ。

「あなたの問題は片づいたのですか」

「ええ、たくさんの子供たちを救うことができました」

「そうですか」

奪うことしか生きる道はないと、
教え込まれた彼らは果たして救われるだろうか。

「あなたの旅行はどうだったんです?」

「最悪でしたよ。全てを失いました」

「…あなたは優秀過ぎました。
あの倉庫の問題は解いてはいけなかった。
犯罪者になる適性を見る問題です。
あの扉が開けられた時点で、ワイミーズハウスは警戒態勢に入りました」

「私犯罪者の適性があるんですね。
それはショックだ」

「…あの扉を開けることが出来たのは、
過去には私だけです」

「へぇ。
世界一の名探偵は、
もしかしたら世界一の殺人鬼になってたかもしれないんですね」

「あなたこそ、
優秀な探偵になっていたのかもしれません」

ワイミーズハウスと、私のホームは対極にあった。
もしワイミーズハウスにいたのなら、私の人生はまた違ったものだったのかもしれない。

「いつ日本に行くんですか?」

「三日後には発ちます」

「キラを捕まえるんですね」

最近ホームでも話題になっていた。日本の不思議な殺人鬼。No.0が接触を試みたけど無理だったって、言ってたっけ。

「一緒に日本に来ませんか」

「…正気ですか、エル。私は殺人鬼です」

「ええ知っています。アメリカの本部データベースにあなたが承った全ての殺人のデータが有りました。あなたはとても優秀だ」

「探偵が死神を連れてちゃ、格好つきませんよ」


そのときピーという電子音が鳴った。


エルが慌てたようにナースを呼ぶ。
意識が朦朧とする。


「すみません、エル。私たちはボス無しでは生きられない身体になってるんです」

「どういうことです?」

「幼いころ、身体にそういうチップを仕込まれました。言うことを、聞かせるために。子供たちは、まだ、埋め込まれて、ない、はず、」

「しっかり、」

「あの子たちを、頼みますね、エル」





そこで私は死んだ。
12歳の冬だった。




20140928

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