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 それからまた数ヶ月、私は旅行に行った葬儀屋の代わりに店番をしていた。といっても基本は暇なので、窓辺でうつらうつらしてるのがほとんどだ。そんなある日の朝方、慌ただしく伯爵様と執事がやってきた。

「あれ伯爵様、ご機嫌うるわしゅう」

「葬儀屋はいるか!」

「店長なら旅に行くと言って帰ってませんが」

「くそっ逃げられたか!」

伯爵様はお怒りの様子だ。彼が握りしめていたらしい新聞を見せて貰うと、豪華客船でのゾンビ事件が載っていた。死体が動くとかなんとか。

「あー、確かに店長が関わってそうな事件ですねぇ」

「関わってるどころか、事件の主犯だ!」

あらまぁ。私はまじまじと新聞を見つめる。やたら斬魄刀について聞いてくると思ってたら、そういうことだったのだろうか。深いことは話さなかったが、どうやら葬儀屋は命の鎖を無理矢理に繋げたらしいのだ。確かにそうすると魂の無いはずの死体が動く。

「貴様、最近葬儀屋が怪しいとは思っていなかったのか」

「あの人はいつだって怪しいですから」

そう言うと伯爵様は納得したようだ。というか、半分は諦めのようだ。随分とお疲れらしい。

「じゃあ店長はもうここには帰ってこないんですねぇ。寂しいなぁ」

「それでお前はどうする?」

「あー、そうですねぇ。ここで情報屋を続けても良いんですが、如何せんここの世界に詳しくないですし、店長以上の情報屋にはなれそうにもないですしねぇ」

「だったらウチに来たらどうだ。ちょうどフットマンを一人増やしたとこでな、二人になろうがたいして変わらない。かなり好条件だと思うが?」

執事があわてた声を挙げる。確かに彼にとっては敵である死神を敷地に入れるわけだし、私って訳わからないし。

「確かに。直ぐにでも飛びつきたいくらいですが、私は店長、葬儀屋とは一切の連絡手段がありませんし、有力な情報も知らされてません。葬儀屋にとってはその程度の存在だったんでしょう。それでもいいのですか?」

人質としての価値はないということを言っている。

「構わん。葬儀屋を追うことだけが目的ではないし、お前を盾にすることもない」


20141010

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