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赤い死神と、伯爵殿の執事が満月の下で戦うのをただ見ていた。
死神によって傷を負った赤いご婦人は、鎖がもう切れてしまって助からなかった。場合によっては助けに入ったのだが、必要ないと判断した。彼女がかのジャックザリッパーだったんだもの。これくらいの報いは当然だと、私は久し振りに死神らしい采配をしてみる。
にしても、こちらの死神の斬魄刀はえらく物騒だ。こちらでは死の鎌と言うらしいけど、それがチェーンソーだなんて。彼らが戦う建物から数百メートル。鐘楼搭に腰掛ける私は、隣の相棒に尋ねる。
「どう思う、百代?」
「剣八あたりは喜びそうな獲物なんじゃねぇか」
私の死の鎌は面白そうに答えた。でも、もし俺が戦うことになったら、速攻どこかに飛ばすわ。そう言う彼は、やはりチェーンソー相手は嫌らしい。私は笑って、もしそうなったら頼むね、と言う。もちろん、そうならないことを願うけれど。
伯爵殿はどうやらあの執事と契約を結んだのだと様子を見ながら思う。この世界には死神と悪魔はいるようだが、虚はいない。なんて平和なんだろうと私はあくびをしながら考えた。
数日後、私は葬儀屋と共に彼女の葬儀に出席していた。唯一の肉親を失ったらしい伯爵。消沈してるかと思いきや、そうでもないらしい。私はその気丈な姿に、素直に感心した。
20141010
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