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 隣の街まで行くと、そこには天空競技場とかいうコロシアム的な建物があった。この近代的で清潔で明るい建物は殺し合いの場とは到底思えない。こんなところで、格闘が行われるのか。

 聞いてみると、どうやらちゃんとファイトマネーが出るらしい。私は良いものを見つけたと思って、受付に走る。周りの輩が笑いながら見てきたが、まぁいい。あたったらコテンパンにしてやるからな。このやろー。


 1ヶ月が過ぎた頃、私は150階から上をいったり来たりしている。ファイトマネーは跳ね上がり、そこそこの人気も出た。

 それもそうだろう、私の姿は男受けしそうな黒髪の綺麗なお姉さんだ。チャクラを消費するだけなのになぜかって?そのほうが安全だからに決まってる。
 
 登録をはじめ、試合の時やトレーニングのとき、部屋から出るときの一切は、この姿に変化している。そのほうがこの競技場を出たあと、変な因縁を付けられずに済むと思ったのだ。変化の術はとても便利で、もし殺し屋時代に持っていたら、と何度も考えた。



 今日は対戦日。相手は殺し屋上がりだとかいう覆面の男らしい。お仲間か、と思いながら朝からジムでウォームアップをする。その時も私は綺麗な黒髪のお姉さん。



「ーさて、今日のファイトは──殺した数は星の数!ねらった獲物は逃がさない!元殺し屋ジェイソン!ー」

盛り上がる会場。覆面の男は、鋭い眼孔でこちらを見ている。

「──そしてそして、その対戦相手は!!一ヶ月前この天空競技場に音もなく現れた期待の新人!今までの戦績は無敗!今日もまた、敵に情けさえ与えず勝利するのか!美しくも冷徹な死神、黒崎!」

 盛り上がる声が一段とデカい。ここでのあだ名もまた死神になってしまったらしい。一番の理由は、真っ黒の髪と服なんだろうけど。懐かしい名前は、オレンジ頭の彼からいただいた。

「レディー、ファイト!」

覆面の男は開始早々、吹き矢で攻撃してきた。どうやら、遠距離戦で戦いをすませるつもりらしい。会場からブーイングの嵐だ。それもそう、誰が吹き矢で戦う姿を見たいというのか。観衆が求めているのは、血だ。

 私は少しばかし遊んでやろうかと、その吹き矢をナイフで弾く。彼は次から次に吹き矢を放つ。しかさ私はそれを弾き、避けた。殺し屋がそんなに慌てていいのか。肺活量のないやつ。呼吸の荒さは精神の乱れだろうに。

 彼が吹き矢から口を離した瞬間、私は瞬歩で一気に彼の後ろに回り込んだ。会場が沸き立つ。このままナイフで一突きしても良かったが、ここはコロシアム。魅せる試合をしなければならない。

 私は男のわき腹を思い切り蹴る。男は場内の中央に横たわった。沸き上がる会場。私は両手を上げて、会場に、手拍子を要求する。これでもう、会場は私の味方だ。

「少し、遊んであげますよ」






 快勝、快勝。鼻歌混じりで部屋に戻る。シャワーを浴びて、ベッドに寝転がると、変化の術を解いた。やっぱりチャクラの消費が激しい。霊圧を併用しているからか、大きな負担にはならないが、そのせいで忍術が使えないのは少し不便だ。

「一ヶ月でこの額か……」

通帳を見ながら、当面の生活費は確保できたかと安心する。けれど、職もないし、刀を買い戻すまでには足らないし。もう少し稼ごうと決意する。


インターホンが鳴る。
私は画面越しに客を確認する。

「こんにちは、黒崎さん」




20141003

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