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 我愛羅は孤独に育った。物心が付くと、当然のように他人から隔絶されて育てられた。風影は私にさえ彼と会うなと言ったが、加流羅と同じく彼もまた私の家族だ。砂の里に少しばかりある森で、しばしば私たちは会っていた。我愛羅は少し内気だったが、加流羅に似た優しい子供に育った。

「ひなたの耳はなんでそんなに大きいの?」

「我愛羅の声が良く聞こえるように」

「ひなたの目はなんでそんなに大きいの?」

「我愛羅のことがよく見えるように」

 加流羅と同じ事を聞くんだなと、言えば、我愛羅は嬉しそうに笑った。彼は家族の繋がりを欲しがったのだ。私たちはいつも木の上で菓子を頬張っていた。甘味を食べる我愛羅は、とても一尾の主には見えなかった。

「ひなた、僕はお父様に嫌われてるのかな」

「さぁ?私は我愛羅が好きだよ」

 我愛羅は嬉しそうに笑うが、それでも彼は父親からの愛を欲しがった。まだまだ子供だ、仕方がない。






「酷なことをしますね、風影」

 ある日、私は風影の命を受けて、隣の里まで任務を遂行に行っていた。それから帰ると、私はその命が罠だったことに気づいた。そのときには、もう間に合わなかった。一点を見つめる風影を、私はじっと見つめる。自分の子供でしょうに、と私は肩を竦めた。我愛羅は孤独だ。あの優しい少年は、孤独に生きさせられていた。

「息子だからこそ、じゃないか」

 手出しはするなよ、と風影は念押しに言う。夜叉丸はどうやら死んだらしい。一尾の力が暴走し始めた。夜の砂の里で、獣が一匹悲しく泣いた。




 その翌日、私は木の葉の里に行くことになっていた。もちろん風影の命だ。私はしばしば忍びの仕事を手伝っていたが、正式な砂の里の忍びではない。無論、断る事も出来たが、風影はそれを許さなかった。私は嘆息する。まぁぬけ忍にはならないし、いいか。ただの移住だ。平和に暮らせるなら、どこだって構わない。

 ガランとなった自室。学校に行っているはずの、我愛羅が気になった。しかし当然のように、我愛羅にはなにも言うな、との命だった。私は森の入り口に日持ちするだろう乾菓子を置いていくことしか出来なかった。


20141002


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