弐
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それから私は砂の里で暮らしていた。
「ひなたー!」
そう言って抱きついてきたのは、赤い髪の先生の娘、加流羅。彼女の友達になってほしいというのが、彼の出した条件だった。私たちはともに学び、遊び、そして成長した。加流羅は病弱だったが、聡明で明るかった。私の忍術は全て彼女から教わったと言っていいだろう。チャクラの錬り方も、手裏剣の扱い方も。
そして時には、風影である加流羅の父に頼まれて他の里の忍びを暗殺した。風影からの私の評価は高い。私は、死神だったときよりも、忍者の戦い方のほうが性に合ってると思った。
チャクラは霊圧と似ていたが、全くの別物だった。だから私は時と場合によってそれらを使い分けた。しかし百代は相変わらず見つからなかった。
平和だと思った。砂の里は治安はあまり良くなかったが、それでも加流羅と暮らす毎日も学校も平和だった。そんな日々がずっと続くのだと、前にも同じようなことを思ったと思い出した。
「ひなた、私結婚することになったわ」
何年経ったのだろう。おてんばだった加流羅は、大人の女性の顔をしてそう言った。同じくらいだった背はとうに彼女の方が高くなっていた。どうしてかわからないが、私は年を重ねることがなかった。たぶん、魂がこっちの人間ではないのだ。
「そっか。お幸せに」
それから彼女は、次の風影になる男と結ばれた。彼は彼女の父に良く似た男だった。
「子供?」
それから一年後だ。ええ、と加流羅は笑った。元からの病弱も相俟って、彼女は床に伏せることが多くなったが、それでも幸せそうだった。
「この子にはつらい運命を背負わせることになるけど、私の子供ですもの。きっと強くたくましく、優しい子になるわ」
あなたも居てくれるでしょうし、加流羅は子供が出来て今まで以上に笑うようになった。私は加流羅の笑った顔が好きだった。
それから一年を待たずして、加流羅はこの世を去った。彼女の形見である我愛羅と名付けられた子供は、一尾を封じる人柱力となった。
20141002
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