優秀な執事とドンキホーテファミリー。
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「また残してらっしゃるのですか」
そう言って現れたのは、ドフラミンゴの執事で俺らの世話係のナマエ。ドフラミンゴが小さいときからあいつに仕えているんだという。ピンとした背筋に、一文字に結んだ唇。厳しそうな印象を受けるが、その実この執事は厳しい。
「パンが食べれなくて困るのはロー、あなたですよ」
将来常に米がある状況にいるとは限らないでしょう?コックが腕によりをかけたのですよ?とかなんとか言ってるが俺は騙されねぇ。あんなパッサパサなもの食ってたまるか。
〈うちの偏食がご迷惑をおかけしております〉
「ベビー5、女の幸せとは好いた男に必要とされることです」
少しはにかんで言うこの執事が、初めて少し可愛らしく見えた。いつもローやバッファローに厳しくしてる姿を見てるから、恋やら愛やらとは無縁な人なんだと思ったいたけれど、そうでもないらしい。
「じゃあ、ナマエはいま幸せ?」
そう聞いたら、厳しいこの執事は、また可愛くはにかんで頷いた。
〈けど、そこまでなれとは言ってないのですよ〉
「あら、起きてたんですか」
そう言って、俺の部屋に入ってきたのは他でもないナマエ。まぁ俺の部屋の鍵はナマエしか持っていないから、ナマエ以外だったら逆に怖いけど。
「てっきり寝ていらっしゃるかと」
最近は部屋に籠もりっぱなしですね。そう言って、周りの食器やら洗濯物やらを片づけていく優秀な執事。
「ちょっ!いいってナマエ!それ俺のパンツ!」
「お気になさらず。私はあなたのおしめも代えたことがあるのですから」
それとこれとは違うんだって!そう言いたかったけど、優秀な執事はあっという間に籠に洗濯物を詰め込んだ。幼い頃から知っているけれど、この執事に死角はない。幸せだと思うその裏で、いつもナマエが支えてくれてるのを知っていた。
この執事がいなかったら、俺の人生は全く別物。そう考えたら、急に労りたくなった。俺は小さくなったナマエの背中を後ろから抱き締めて、そのままソファに倒れ込む。
「コラソン様?」
「ちょっと休もうぜ」
ナマエの肩口に顔を埋める。仕方ないと思ったのか、優秀な執事はため息をついて俺に身を任せた。
〈実は一緒に風呂にも入ったことがあると言ったら、あなたはまた真っ赤になるのでしょうか〉
20141218
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