優秀な執事の定例会議。
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 さて本日は海軍本部にて行われる王下七武海の定例会議で御座います。私はドレスローザに残るつもりだったのですが、坊ちゃまの強い希望により海軍本部まで共に参った次第であります。 


「もう何度目ですか。いい加減慣れていただかないと、私もいつまでもお側にいれるわけでは御座いませんよ?」


坊ちゃまの羽のコートを整えながら、私は少しばかし小言を漏らしてしまいます。


「ナマエならわかってくれるだろう?」


七武海の奴ら怖いんだって。そう漏らす坊ちゃまも七武海の一角、それも悪のカリスマと恐れられているのですが。私は大きくなった十も年下の主を見上げます。マリージョアにいたときはあんなに小さかったのに。こんなにご立派になられてホーキンス様はさぞお喜びでしょう。


「もっと自信をお持ちくださいませ。あなたはドンキホーテ・ドフラミンゴ。七武海一凶悪な男なのですから」


そう言って恐れ多くも坊ちゃまの頬を両手で挟む。坊ちゃまにはこの執事めが付いております。そう呟くと、坊ちゃまはどこか安心されたようにニヤッとあくどい笑みを浮かべました。


「あぁ、もちろん」

じゃあ、ちょっと相手してくらぁ。坊ちゃまはそう言って控え室から出て行かれました。








 さて、ところ変わって、ここは海軍本部の中庭で御座います。私は、幹部候補生である海兵達の居合いを拝見しております。何故かと言いますと、私の隣で檄を飛ばす中将に連れてこられたからであります。


「あんたドフラミンゴんとこの執事じゃな?」

 少し外の空気を吸いに、と控え室を出たのがいけなかったのでしょうか。そう声をかけてきた海軍の英雄、拳骨のガープ中将殿は私の腕を掴むと、ちょっと行くぞと言って歩き出しました。着いた先が、この広い中庭だったのです。




「よし、やめい!」

中将殿は、海兵を召集いたしました。どうやら、これから模擬戦を行うようです。説明するその横で私は、坊ちゃまが無事に会議を乗り越えられているかばかりを考えておりました。緊張しすぎて、またおつるさんに迷惑を掛けてないでしょうか。



「……ってことで頼むぞ、ドフラミンゴの執事!」

「はい?」

「相手は最近力をつけてきてる海兵、油断は禁物だぞ!」


はて、なんのことやら。そう言う前に私はとある海兵の前に押し出されてしまいました。



「○○○所属、○○コビー、曹長であります!」


 目の前にはピンクの頭をした青年。どこかで見たことがあると思えば、やはり見知った顔で御座いました。一方的にではありますが。どうやら模擬戦をせねばならぬ展開になってしまったようでございます。恨めしい顔をして中将殿を見るとしたり顔で笑っていらっしゃいました。致し方ありません、私はそこにいた海兵から模擬刀を受け取ります。


「ご紹介に預かりました、ドレスローザ共和国大統領ドンキホーテ・ドフラミンゴの執事、ナマエで御座います」


さて、ドフラミンゴ様の執事と名乗った以上、みっともない試合は出来ません。四十を越えた老体には少しばかしキツいのですが、チャクラを全身に漲らせます。


「では両者構えて!……始め!」


中将殿の合図で模擬戦が始まりました。





「やぁああ!!」

 いきなり間合いを詰め、つっこんできたコビー曹長殿。

 私はそれを軽く交わしながら、相手の出方を伺います。若いからでしょうか、一つ一つが蔑ろになり力任せになってるような気もいたします。

 三メートルほど下がったところで、いったん相手の攻撃の手が止みました。その隙を見逃すはずもない私は懐に入ると、模擬刀の柄で曹長殿の鳩尾を突きます。

 瞬間、地面を蹴って、飛び退く曹長殿。

 去なしたことでダメージは軽減されたでしょう。良い判断です。


 模擬戦をしているこの中庭には、先ほどまでの海兵達の倍はあろうかという人数が私たちを取り込んでいました。これはこれは想定外。さっさと終わらせてしまおうと、私は刀を構えなおします。 


「では、参ります」

私は脚に少しばかしチャクラを込めました。











「がははははっ!この執事相手によくやったぞコビー」


中将殿はそう言って倒れたコビー曹長殿の腕を引っ張り上げました。私は近くにいた海兵に模擬刀を渡すと、乱れてしまった服を整えます。


「ありがとうなぁナマエさん!いい練習になったわい!」

「とんでもございません。海軍の未来は明るいようで、少しばかし残念でございます」


そう返せば、がはは!と言って叩かれる背中。相変わらず陽気なお方であります。


「ドフラミンゴの執事じゃなけりゃあ、海軍にスカウトしとるとこなんじゃがのぉ」

「恐れ入ります」







 それから中将殿と談笑していれば、私の耳に聞こえる坊ちゃまの声。


「ナマエ」


 お呼びのようです。私は中将殿に断ると、最短ルートで坊ちゃまの元に駆けつけます。


「お呼びでしょうか」


 会議室の前の廊下。開け放たれた窓からいきなり人が現れ、廊下にいた皆様は少々警戒してらっしゃる様子。それも当然、マナーが悪かったかと、反省いたします。


「海兵との剣戟、見てたぜぇ?」

「それはそれは。お見苦しいものをお見せいたしました」


私は中に入ると、坊ちゃまに正面から向き直ります。


「会議はいかがで御座いましたか」

「滞りねぇ」

「それはよう御座いました」


 ちょうど会議室から出てこられた海軍本部の大将、中将の皆様に一礼する。


「ドフラミンゴんとこの執事かい。悪かったねぇ、ガープが無理言ったんだろう?」


そうおっしゃるのは坊ちゃまの腰ほどもない身長の中将、大参謀のおつる殿。実は、坊ちゃまがまだ七武海ではない頃にお茶をご一緒させていただいたことがありまして、おつる殿とは旧知の仲で御座います。


「ご覧になっておいででしたか。未来の幹部とお手合わせ願えて光栄で御座いました」

「軽く倒してたくせによく言うよ」

「…私はドンキホーテ家の執事で御座いますから。未来の幹部だろうと、ひよっこにはまだ負けるわけにはいきませんよ」

「ふっふっふ、さすが俺の執事だぜ」


 肩に手を乗せる坊ちゃま。皆様があの模擬戦をご覧になっていらっしゃったのは想定外でありますが、ドンキホーテ家の執事としては申し分のない試合だったかと。


「帰るぞ」

「はい。船の用意は出来ております」


ふんぞり返って歩く坊ちゃま。私は海軍の皆様に一礼すると、坊ちゃまの後を追います。




「ベビー5たちに土産買っていかねぇとなぁ」

「では港近くに土産物屋が御座いましたので、そちらで」


嬉しそうな子供達の顔が目に浮かびます。このお優しい悪のカリスマの執事でよかったと、私は心からそう思うので御座います。




20141218

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