平和が一番でしょう
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 壁に刀が刺さっていた。それを見て人々はビックリしていた。なんでだ?下で五番隊の副隊長が、市丸三番隊隊長に切りかかっていた。やっちまえー、と内心思いながら、私はその上空を走っていた。


 私は平和に暮らせればそれでいいと思っている。だから死神という職はその為の手段でしかなく、使命感などは、はなから持ち合わせちゃいなかった。


 けれど、この一件は私の平和を壊しそうな気がした。

なので彼の邪魔をすることにする。私は全てを調べ上げた。







 ある日、白亜の搭で用を済ませた私は、さっさと隊舎に戻る。
これで計画は、もう遂行できない。




 その数日後、旅架が来たらしいというので、小隊を向かわせる。小隊を率いるのは私よりももっと下位の席官だ。どうやら十一番隊は、上位になればなるほど個人行動が出来るらしい。



 眼前で、斑目三席と旅架の一人であるオレンジ頭が戦っている。私はその後ろで彼を仕留めたくて仕方がなかったが、斑目三席が怒ると知っていたので手出しはしなかった。楽しむ戦いだなんて意味があるのか。ただの自己満足でしかないじゃないか。

 他の旅架はすでに何名かと手合わせ済みであったし、私は不要かと欠伸をすれば、そこを斑目三席に見られていたらしい。



「おい!ナマエ!お前なにぼけっとしてんだよ!他の旅架を追えよ!」

「斑目三席が意外と苦戦しているようなので、もし取り逃がしたら、と思いまして」

「うるせぇ!」



よけいなお世話だ!と言って斑目三席は旅架に向き直る。これだから、と私は嘆息する。旅架も旅架で、なぜ話してる隙に攻撃しない。武士という奴なのか。殺し屋だった私には、相手の隙をつかないなど、考えられない。みるに、斑目三席は負けるだろう。彼は優先順位がわかっちゃいない。



「斑目三席、」

「あ?まだ居たのかナマエ!」

「ちょっと甘味でも持ってきますので、それまで持ちこたえて下さいね」

「当たり前だっつーの!」


甘味?と旅架は不思議そうな顔をした。まぁそれが普通の反応だろう。私は隊舎に戻り、何個かの饅頭と治療セットを懐に入れて戻ってきた。そこには斑目三席が倒れ込んでおり、彼はすでに治療済みであった。


「負けたあげく情けまで掛けられましたか」

「…うっせ」

「だからその癖は治したほうがいいとあれほど申し上げたのに」

「…お前と俺は違うんだよ。お前はどちらかというと刑軍向きだと思うぜ」


斑目三席はそう言って起き上がった。



「どうします?四番隊のとこまで送りましょうか?」

「いや、お前は旅架を追え。今回の事件、ただの襲来じゃねぇぞ」


たぶん、とんでもねぇもんが隠れてる。頭は良くないが、妙に勘の冴える斑目三席はそう言って珍しく神妙な顔をした。そう言えば、斑目三席はうっせ、と言って私の頭を叩いた。



「どうも」

「お前は、さっきの!」

オレンジ頭の旅架が地下に降りた。四番隊の七席が一緒だ。私は待ち伏せしていた。四番隊の七席、確か山田とか言ったか、彼は私を見て驚いた顔をする。

「阿修羅四席…!」

「阿修羅?」 

「私の名です、旅架。私の名は阿修羅ナマエ、十一番隊の四席です」


先ほどは斑目がお世話になりました。治療までしていただいて。そう言うと彼は、いえいえとんでもないです、と言った。案外、つられやすいらしい。その隣で山田が興奮している。

「阿修羅四席は史上最速での霊術院卒業、席官就任、出世記録を持っている護廷隊の有名人です!斬拳走鬼のみならず、回道にも精通してらっしゃいます!十一番隊に異動されたのは意外でしたが…」

「そうなのか、あんなちっちぇのに」

「…山田七席。あまり敵と慣れ合わないでくださいよ。旅架、あなたがここに来た理由は十三番隊朽木ルキア隊員の奪還、で間違いないですか」

「…ああ。ルキアを取り戻しに来た」


やっぱり彼はヒーロー然としていて、私はその熱さに少し辟易するのであった。





「じゃあ、世話になったな、ナマエ」

「いえ、お気をつけて」

 私は、いったん地上へと戻る。今後の行動を彼から聞かされた私は、考えが間違ってなかったと確信する。その上で、これからどうするか、どの選択肢が一番平和的かを考える。どうやらこの件、やはりあの人がボスで、他の隊長格も数名この計画に噛んでる。まぁあの人の刀だったしね。どうせこの計画は失敗に終わる。先回り済みだ。




  平和になると、私の直感は言っている。







 四番隊副隊長からの天艇空羅は、私の耳にも聞こえた

どうやらやっと、全員が真実を知ったらしい。




 藍染隊長が満を持した様子で朽木ルキアの魂魄の中に手を突っ込む。




叫ぶ旅架、確か黒崎とか言ったか、彼は熱い。







「………ない、だと?」


裏切られた顔の藍染隊長。ぽかんとする他の隊長格。

しかし一番事態が、飲み込めてないのは他でもない藍染隊長だった。



「…崩玉が、無いだと?確かに、浦原喜助はここに、ここに崩玉を隠したはず、!」



陣が消えていく、消沈した様子の藍染隊長を二番隊隊長と前二番隊隊長が拘束し、朽木六番隊隊長が縛道で封じ込める。さながら芋虫だ。同じように東仙九番隊隊長も捉えられた。藍染はなんの抵抗も見せずに、ただ茫然自失していた。



「猫ちゃん、キミなんかしたん、?」


突然姿を見せた私に、市丸三番隊隊長が問うた。私の考えだと市丸も仲間だったはずだが、彼はどうやら裏切るらしい。私はケロリとして答える。


「崩玉、壊しました」

「は?」


その場にいた全員が私を見た。少し困る。



「藍染隊長の計画は、彼が死んだふりをしたときから知っていました。私は彼の幻術にはかかってませんでしたから。彼の部屋、そして以前の資料を調べあげ、崩玉の存在を知りました。そして、沢山の虚の実験をしていることも。崩玉は壊せない、だからこそ浦原喜助は朽木隊員の魂魄の中に隠しましたが、私は唯一壊せる力を持っていました」



藍染隊長は驚いて私を見る。眼鏡がずり落ちたその顔は随分とダサい。彼が紫乃さんや村人を襲った虚を開発してたんだなぁ、と思うと苦々しい思いがこみ上げる。



「どうも、藍染隊長」

「君は、阿修羅四席…!教えてくれるかな、どうやって崩玉を壊したのか」

「…まぁ、そこは企業秘密ってことで」



 そう言ってニッと笑うと、彼はキレたらしい。叫ぶと、縛道を振り切ってこちらにやってきた。周りで隊長格が止めるが遅い。彼の手が私の頭上に振りかざされる。



「あまり使いたくなかったのですが」



私は刀を抜いた。一応のため機嫌をとっておいた百代は素直に力を使ってくれる。



「reborn」



目の前の彼が光に包まれた。




20141001

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