とっくのとうに気づいていた
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 ここにきて三ヶ月。そういえば、あの人は無事だろうかと考える。ここはあの人がいる国のようで、そうではない。血の臭いも人を切る感触もなにもかも同じくせに、あの人がいる世界ではない。

 五つ番号が若い地区まで来てみたが、人も村も対して変わらなかった。私の大きな獣の耳を見て石を投げ、そして見せ物にしようと捕まえにかかった。逃げれるぶんは逃げた、それでも追ってきたら殺した。私はいつまでも、殺人鬼だった。



 ここにきて半年。出会った老婆から私が鬼子と呼ばれているときいた。頭の包帯は角を隠しているんだろうと言われてると。老婆はこんなに可愛い子がねぇ、と笑った。私は少し、人が暖かいことを知った。老婆に桃でも取ってきてやろうと、私は少し離れたところにある森まで行った。帰ってくると老婆は死んでいた。羽織りが無くなっていた。少し歩くと、老婆ものだった羽織りを着た輩がいた。別に、老婆の復讐をしようとは思わなかった。単に私の勘に触ったのだ。私は彼らを殺した。


 
 それから一週間して、刀が話しかけてきた。日本の刀は話すのかと驚いていると刀は笑った。お前は殺してばかりだね。そんなにして楽しいかい。楽しくないよ、と答えた。でも殺さないと生きていけないからね。刀はそれもそうだと笑う。刀のくせによく笑う奴だと言うと、刀はなにが悪いとまた笑った。刀は私に問うた。力が欲しいかと。欲しかった。この世界で、平和に生きていくだけの力。刀は大きな狐になった。九の尾を持つ狐。名前は百代。彼は私と同じ緑の目を持っていた。私たちは戦った。






20140929


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