14:23 Hogwarts/Atrium
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「レン・エヴァンズ、」

 その声に引き止められたのは、春の麗らかな日差しが差し込む南側の温室。
 ハリーが練習しているだろうクディッチの練習場まで近道しようと、ハーブの香りの中を横切っていた時だった。

「はい?なんでしょうマグゴナガル先生」

 珍しい先生に珍しいところで話しかけられたものだと、僕は身体を捻る。

 10メートルほど後ろ、温室の入口あたりに彼女は立っていた。

「これはあなたが描いたものですね」

 そう言ってペラッと掲げてみせたのは一枚の画用紙。
 どうやら僕がスケッチしたノーバートのようだ。ハグリッドの小屋に置いてきたはずのそれが、なぜマクゴナガル先生の手にあるのか。
 ハリー達がとっ捕まったことを知っている僕は内心焦り、一先ずはすっとぼけてみようかしらと白を切る。

「…さぁ、僕は何のことだか」

 マクゴナガル先生は笑みを深くした。

「ハグリッドの小屋で見つけましてね」
「あぁ!そうでした!!」

 もはやバレているのだと観念して僕はマクゴナガルとの間を詰める。その手元のスケッチを掠めとろうとするが、マクゴナガルは無情にも、そのスケッチを僕の届かない高さまで持ち上げてしまった。

「それは僕が描いたのですマグゴナガル先生!」

お返しください、と手を伸ばすが、彼女はさらに高くそれを掲げてしまった。

「エヴァンズ、なぜこの絵を描いたのです?」

 僕はマクゴナガルがハグリッドがドラゴンの卵を手に入れて孵化させたことまで知っているんじゃないかと冷や汗をかく。上手い言い訳を考えなければハグリッドはもちろん、ロンやハリー、ロンの兄貴まで雷を食らってしまうだろう。

「ハグリッドは長年ドラゴンが飼うのが夢だと言っておりまして、しかしそれは叶わないことだとハリーとロンとで話をしていたのです!その時に、せめて絵だけでも、とロンから聞いたドラゴンの特徴をもとに描いたのがこれです」

 だから返してください、と言う僕の手に先生はおやまぁ、とびっくりした様子でスケッチを乗せた。画用紙の中、鉛筆の荒々しいタッチのノーバートが恨めしげに僕を睨む。

「あなた、何も見ずに、この絵を?」
「ええ、実際のものは見たことありません」

 大嘘である。

「よろしいでしょう、ミスター・エヴァンズ。この絵は私からハグリッドに返しておきます」

そう言ってマクゴナガルはふたたび僕の手からスケッチを奪った。

「はい、」
「それからあなたに紹介したい人がいます」

付いてきてください、とマグゴナガルが言うので、僕はハリーの練習にはいけなくなってしまった。




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