11:43 Hogwarts/
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「動かんといてやぁ、」

 数日たったある日の放課後、僕はハグリッドの小屋にいた。僕がなかなか来ることができなかった間に、ドラゴンの卵は孵り、もう中型犬ほどの大きさに育っている。ノーバートと名付けられたノルウェー・リッジバック種のドラゴンは、頑丈な檻の中で鶏を貪っていた。

 一見するとグロテスクなのだが、ハグリッドはそんなドラゴンにメロメロである。しかし当然のことながら、ドラゴンの飼育は立派な法律違反。明日の夜にはロンのお兄さんの仲間がやってきて、ノーバートを引き取るのだという。

「しかしおめぇさん、上手いもんだな」
「ありがとう、昔から好きでね、」

 僕は鉛筆を画用紙の上を走らせている。
 画材はマリウスからクリスマスに貰った魔法界のもの。魔法の画用紙に魔法の鉛筆で描くドラゴンは、まだかまだかというふうに動き出すのを待っている。

「しっかし、最近あの三人は忙しそうでね」

  ハグリッド、なにか知らないかい、
 そう入った声にハグリッドは大きく肩を揺らした。何か知っているらしい。 

「な、なんだいお前さん。あの三人から何か聞いたのか。」

明らかに動揺しているハグリッドが僕は少しかわいそうになる。きっとあの三人もこんな風にハグリッドに迫ったにちがいない。しかもあの頭の切れるハーマイオニーが相手では、油断も隙もなかったろう。

「ニコラス・フラメルの賢者の石のことについて何か知らないかと聞かれてね」
「な、あいつらそこまで調べたのか!?」
「誰かを疑ってるみたいなんだけど、」
「スネイプ先生だろう、全く良い人だと言ったのに聞きやしない。」

 僕は最後にノーバートの瞳に陰影を入れる。そして、仕上げとばかりに魔法の定着液を吹きかけると、画用紙の中のノーバートは動き出した。僕は満足気ににんまりと笑う。

「はい、ハグリッド」
「お、俺にくれるのか」
「もちろん、その為に描いたんだ」
「レンよお、オメェさんってやつは!」
「ぐっ!!、苦しいてハグリッド!」
ハグリッドは勢いよく僕を抱きしめた。
 画用紙がグチャ、と曲がる音がした。


***

 アホなんちゃう。透明マント忘れて先生に見つかるとか、ただのアホやないの。
 レイブンクローの男子寮、一年生のスペースの僕のベッドの上。入学仕立てのいつの日かのように、僕らは思い思いのお菓子を持って話をしていた。
「しっかしノルウェー・リッジバック種かぁ。俺も見たかったなぁ」
 テオドルスは両手で顔面を覆い天を仰いだ。
 ハグリッドから自慢されたのだという目の前のこの先輩は、どうやら魔法生物オタクだったらしい。スネイプのレポートさえなけりゃなぁと、先程からぼやいている通り、ノーバードがいる間テオドルスが小屋に顔を見せることはなかった。
 それからマリウスも僕と一緒にハグリッドの小屋に行った際に卵を見ていた為、事の顛末は透明マントの事を除いて話してある。
「けど、ハグリッドはそんな珍しい種類の卵をどうやって手に入れたんだろうね」
「それなんよなぁ、ホッグズ・ヘッドのパブで怪しい奴にって言うてたけど」
「ふぅん、ちぃと調べてみるかな」
 テオドルスが口の端を吊り上げた、悪い顔が良く似合う。

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