Halloween's night
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寒い冬が終わり、春がきて、夏が始まり、そして終わろうとしている頃。ハリーの一歳の誕生日が近づいている。二週間に一度だったはずの姉妹の逢瀬はほどんどなくなり、アイリスは一年前に聞いた黒い噂を思い出す。魔法界での、闇の帝王の台頭。どうか、彼らが無事でいますように。
強い風と雨が一晩中降り、外に出歩けない日が一週間以上続いた。10月の最後の日の、冬の足音が近づいたあの夜。ハロウィンの装飾を片づけていると、意識がぼうっとしていたのだろう。パリンという音で現実に戻ってきた。
「珍しいね、君がお皿を割るなんて」
僕が片付けよう、レンをいいかい?そう言われてアイリスは、先ほどから夜泣きがひどく、ようやく眠りについた息子を抱っこした。
思えば不吉な夜だった。天気はずっと悪いし、お皿なんて割ったこと無かったのに割ってしまうし、しかもそのお皿はジェームズとリリーの結婚式で貰った2人の名前が入ったものだったし、どこか体調も優れなかった。
「いやな予感がする、空木」
「…大丈夫、僕がいる」
優しく抱きしめる空木。そのぬくもりに少し安心する。しかし、アイリスの不安が取り除かれはしなかった。
「リリーに電話してみる、」
そう言ってアイリスは、レンをベットに寝かせ、電話をかけようとする。しかし、
「繋がらないわ」
「…電話線が切れているんじゃないかい」
「どうしよう、空木。魔法界の争いに巻き込まれでもしていたら、もし2人が命を落とすなんてことあったりしたら」
「落ち着いて、アイリス」
空木はアイリスを座らせて、どこからともなく呪符を出した。
「僕が式を飛ばして確認しよう。それでも2人の無事が確認できなかったら、2人の家に向かう」
それでいいかい?と空木はアイリスの目を見つめる。
「ええ、そうしましょう」
一時間ほどかかると言われ、その間アイリスは手当たり次第に電話を掛ける。シリウス、リーマス、ペチュニア…。ペチュニアには繋がったものの、リリーの行方を知るはずがなかった。
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