落ちる夕日睨んで
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「正直、ここで終わってまうとか思ってなかったわ。」




空を見つめたまま、陸は言った。
淡々とした口調からは、喪失感を感じさせる。




「めっちゃ悔しい。なんで勝たれへんかったんか、今でもようわからん。別にな、努力せんかったのとちゃうんやで。むしろ、全国のどこよりも練習量多いし、厳しいメニューこなしてきた自信もあんねん。驕りやないで。ホンマやねん。先輩らも実力ある人達ばっかやし。準決の相手見たときも、ウチのほうが統制とれとるし、勝てる思ったんや。そいやのに・・・、」




始めは力強かった口調が、徐々に弱弱しくなっていく。横顔を盗み見れば、陸は眉間に皺を寄せて、泣いてるんだか怒ってるんだかわからない表情をしていた。





「先輩らバスケ続けるやろうから、これが最後じゃあらへん。けど、」





そこまで言って、陸は鼻で自嘲気味に笑って、





「最後ぐらい、一緒にコート走りたかったわ。」





そう言って、もう一回だけ鼻でふんっと笑った。


俺は、陸みたいに強くも、強がれもしないようだ。俺は最後の最後まで対戦相手に怪我をさせて、必死で俺の赤目を治そうとしてくれてた部長たちの期待にも応えられなくて、挙句足引っ張って。なにやってんだよ、俺。これから俺が部長だなんて考えられねぇし、どうすりゃいいかもわかんねぇ。





「陸、お前部長?」



そう問うと、陸はまた眉間に眉を寄せた。一瞬だけだったけど。



「やろうなぁ。けど正直、ぜんっぜん実感ないねん。ウチ今走れへんし。」



靭帯損傷、全治一ヶ月。そしてそれからリハビリ。これからの道のりが一番きついことになる。それこそ個人競技のテニスとは違い、要の主将を欠くのだから、新チームが良い滑り出しにはならないことは安易に想像できる。




「亜季にな、譲ったがええかな、とも思ったんよ。せやけど、」



陸が渋い顔をするから、なにかと問えば、渋い顔のまま、笑うなよ、と返される。




「夢を見るんよ。」



「は?」



「全国の決勝で試合しとる夢や。何回も見た。パス貰ってドリブルで突っ込んで、シュート決めて。その夢の中でいっつもウチの背中は、」




4やねん。



そう言って、満足気に笑む。


「ちゅうか、夢とか関係無しに、番号が5やったりしたらいっちゃん悔しいのは結局ウチねん。」



陸は悪戯っ子のように笑う。



「お前もそうやろ?満田が部長になるん、黙ってみてられるんか?赤也は赤也でええ。誰もお前に幸村先輩みたいになれとか思ってへんわ。」



どうやら、言いたいことが顔に出ていたらしい。お前わかりやすすぎんねん、そう言って陸は鼻で笑う。夕焼けに照らされて俺と陸はオレンジに染まっている。




「来年は、旗二本持って帰ってこような。」


そう言うと、陸は「当たり前や」と言って俺の背中を一発叩いた。いてぇ。






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