アイスになりたい
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八月下旬もうそろそろ夏も終わって良いんじゃないかと、皆が思い始めるころ。しかし、その色はまったく無く、真夏の陽射しが肌を甚振る。立海大学附属中学・高校では文化祭、通称“海原祭”の準備が行われている。この海原祭では、各クラスの出店のほか、各部活動でも出店をする。これは部活動に力を入れる立海大学附属ならではのものだろう。




「あかん、溶ける」




「俺も。これ運び終わったら、ジャッカル先輩にアイス奢ってもらおうぜ」




「そりゃええ考えやな」





俺は陸と海原祭で使う資料を運んでいる。所謂パシリだ。次期部長コンビでいいだろ、つって押し付けた顧問を殴りたい。つーか暑い。陸の言うようにこのままじゃ俺らがアイスみたいに溶けちまう。




「大丈夫か、赤也」




そう言って俺を見下ろしてくる陸にちょっとムカついた。俺もこの一年で大分伸びたんだけど、コイツの遺伝子には敵わないらしい。追いついたことなんて一回もない。それどころか、見るたびにでかくなってる気がする。


この間は立海近くのお嬢様学校の生徒にプレゼントを貰った、と自慢してきた。可愛くラッピングまでされたそれは、絶対本命だと思うが、当の本人は一切気にしていないらしい。あっという間にプレゼントと一緒に貰ったというクッキーを平らげていた。



本当にコイツ女なんだろうか。ぜってぇ、性別偽ってんだろ・・・





「いっ・・・!!」





階段に足をぶつけた。陸は振り向いて呆れたようにため息を吐いた。





「しょーもないこと考えよったんやろ」



「ち、ちげーし!!」





陸はそんな俺を鼻で笑うと(これはコイツのクセだ)「さっさと行くで」と言って松葉杖を器用に使って階段を昇って行ってしまった。ギプスで固定された左足が痛々しい。






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