彼女について考察
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風早陸というひとがいる。


彼女は俺の友人であり、現在この立海大学附属中学で男子テニス部に次いで大きな地位を占める、女子バスケ部の新主将だ。だからどうしたというわけはなく、強いていうなれば、俺たちテニス部が東京の無名校に敗れ旗を持って帰れなかった今年の夏、同じように惜敗し全国ベスト4となった女子バスケ部の重みを、彼女はその4という数字とともに背負って来年度また全国に行くのだろうということだ。



しかし、彼女は、身体の故障という大きな負担を抱えていた。小学校から悩まされてきた腰痛に加え、全国大会の一歩手前、県大会で靭帯を損傷した。バスケットボールは怪我の多いスポーツであり、別に怪我自体は珍しくもなんともない。


問題は新主将が怪我をしている、という事実だ。


チームの士気が下がることを、彼女は懸念している。全国まで行くチームがキャプテンが故障しただけで揺らぐとは到底思えない、そう彼女に言えば、じゃあお前らはどうやったんか?と聞かれる。


練習帰り、雪が降った冬の寒い日。部長が倒れた、テニスが出来ないのかもしれなかった。それだけで俺らは揺らいだ。それこそ、全国3連覇を逃すほどに。


正直に認めると、彼女は、せやろ、と鼻で笑う。自分は死ぬような怪我じゃない、けれど新チームの結成のときキャプテンが故障だなんて、士気が下がるのもいいとこだろう。彼女はもうすでに、4という最も重たい数字を背負ってるのだと、俺はそのとき初めて気づいた。



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